2025年8月20日水曜日

満洲回想旅行(13)


13.ラストエンペラーの住まい


映画「ラストエンペラー」で坂本龍一演ずる甘粕正彦元憲兵大尉に率いられ、193111月軟禁されていた天津を脱出した清朝廃帝溥儀は、奉天(瀋陽)を経てその月の下旬新京(長春)に入り、翌年3月満洲国執政として即位する。すべては関東軍による満州事変(19319月)のシナリオ通りである。しかし、この時点でこの地に宮殿は無く、有力者が使っていた清朝時代の役所旧運局(交通・通信・郵便)を公務を行う場所とし、それに住居を追加新築して、仮宮殿を構成、終戦まで過ごすことになる。今はここが長春観光の目玉である僞満皇宮博物館となっており、今日の最初の訪問先であった。


先ず公務を行う本館から見学、皇帝の執務室、会議室、謁見の間(ここには玉座もある)、待合・待機の間、日本人顧問の部屋などがほぼ当時のまま残されている。ひときわ惹きつけられたのは大日本帝国と満州国の間で交わされ“日満議定書”調印が行われた部屋で、漢字の説明からこれが売国行為であることを難じている内容であることが推察できる。帰国してこの議定書を調べて分かったことは、独立国として承認しながら外交・国防は日本に委ねるとある点だ。至るところで目にする“僞満”の論拠の一つはここにあるのだろう。


私邸の部分は日本人建築家設計の新築、灰色レンガ造りの二階建て、阿片中毒だった妃婉容の部屋なども残り、ラストエンペラーでの悲運の女性が身近なものに感じられた。

 


写真は上から、皇宮全図、皇宮入口、本館前景、日満議定書調印の場

(写真はクリックすると拡大します)

 

(次回;長春観光)

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