
半日の付き合いで、少し癖のある日本語にも慣れ、美味しいトルコ産白ワインの軽い酔いもあって(彼は宗教上の理由で飲んでいないが)、お互いの家族や仕事に話が及んでいった。それによると、彼は30過ぎだがまだ独身。これはインフレが激しく、生活基盤の安定しない、今のトルコの都市生活者では珍しいことではないとのこと。イスタンブール大学で機械工学を学んだが、良い仕事は無く、一応友人と空調設備工事の会社を経営しているが、これだけでは食べていけず、この地で日本語を学び、ガイドの仕事で稼いでいるのだと言う。「何と言っても、ドルはインフレヘッジになりますからね」と。このツアーの契約は全てドルの現金払い、どうやら彼もそのおこぼれに与れるらしい。
私も嘗て機械工学を学び、石油企業に入って長くエンジニアとしてやってきたことを話すと、「日本の技術は素晴らしい!出来れば日本企業で働きたい。私の日本語で働けるだろうか?」と聞いてくる。「日本語は問題ないが、この地に日本企業の工場があるのかい?」と問うと、「トヨタの進出が決まっており、既に工場建設が始まっています」との答え。まだ何か言いたそうだったが、ランチタイムはここで終わった。

どこでもブルハンさんは、遠来の友人に対するように丁寧に日本語で説明したりアドバイスしてくれたので、観光ガイドを雇ったという感じがしなかった。
初日のスケジュール全てが終わり、ホテルのロービーで別れるとき、遠慮しがちに、「日本企業に就職したいのは本気です。トヨタに知り合いの人はいませんか?」と聞いてくる。大学を出てから必死で、学んだことを生かせる、職探しをしているのだろう。全く知人がいないわけではないが、それほど親しくもないし、情報技術の専門家である。「残念ながらトヨタにはいないなー」と返事をせざるを得なかった。「いいんです。チョッとお尋ねしただけです。ありがとうございます」とさびしげな笑顔で礼を言うと去っていった。(つづく)
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