2011年3月19日土曜日

決断科学ノート-65(東北・関東大震災-4)

 震災後の問題として、被災者の救援、原発事故に次いで、物資不足がある。直接的被害がほとんど無かった地域(特に首都圏)での衝動買いが需給のバランスを著しく乱しているようだ。基本的に石油製品を含めて、通常の需要ならこんなパニック状態には陥らないのだが、大都会とその周辺の人は社会的な衝撃に極めて弱い。別の見方をすれば、昔から体制批判ポピュリズムの支持基盤であり、政府を信用しない傾向が強い所である。地縁・血縁が薄い近郊在住者(新興住宅地や大団地などの住民)は何事も自分の周辺だけしか(それとマスメディア報道;関心を呼びそうなテーマを針小棒大にしがち)情報が無いので、風評に影響されやすい。したがって政府やマスメディアが“冷静に”と訴えてもなかなか事態は収まらない。
 個人的に身近な石油製品に関する現状など、信じられない状態である。確かに、関東地区でもコスモ石油千葉製油所の火災はLPG球形タンクの爆発があり、決して軽微ではないが、その他の製油所(新日石根岸、出光千葉、東燃ゼネラル川崎など)は安全に緊急異常停止しただけで事故を起こしたわけではない。点検後は直ぐに(一週間以内に)稼動するし、製油所には充分製品在庫もある。
 加えて、最近の石油業界は需要低下もあり精製能力は過剰で、どこを止めるかが切実な問題点になっているのである。また、原油は中東の政情不安があるものの、直近の問題として1973年の石油危機のように、供給が絞られたり価格が高騰しているわけでもない。
 このような事情は新聞にも書かれているのだが、政府・マスメディアの説明の仕方に問題があるように思う。先ず、現在の政府は残念ながら仮免許運転者(素人)と見られており、誰からも信用されていない。首相や経産大臣が語るよりエネルギー庁長官にでもしゃべってもらった方が説得力がありそうだ。また、マスコミは石油不足が、真に憂慮されるのは東北地方であること(この地方唯一の新日石仙台製油所の火災;精製能力は17万バーレル/日;全日本の5%以下)をはっきりさせ、あたかもそれが全国に及ぶような混乱を生じさせぬよう報じ方を考えるべきである。
 東北地方への製品輸送には問題が山積みである。鉄道・道路の問題の他に港湾が相当被害を受けていること、特に油槽所のタンクがかなりやられているので、船舶による大量輸送はその受け入れ先が限られる。またガソリンスタンドも被害を受けているので、ローリーで運んでもどこでどのように荷降ろしするのか問題だ。
 東燃和歌山工場は、しばらく使っていなかったドラム缶出荷設備(今では希少価値)を動かし、トラック輸送もするようだ。これなら被災地にそのまま置いてくることが可能になる。
 トラック物流に関しては、自車の燃料の問題も出てくる。中間点に給油基地を設けたり、場合によってコンボイを組ませ、それにローリーを随伴させるような策も考えるべきだろう(電撃作戦から学ぶことが多い)。
 どんな問題解決策も、従来の法規や所轄官庁の枠を超える柔軟な対応が求められる。そこにこそ政治家の力を傾注すべきである。

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