4.草津温泉-2
泊まった宿は、何度も名前を出しているが、奈良屋。昔からの温泉場ではこのところ、中心地にある老舗旅館を選んでいるところから、ここに決めた。紀州で過ごしたことがある者にとって吉宗が入った風呂(無論何度も作り直しているだろうが)が在るのも魅力だ。ガイドブックで見ると湯畑も見える部屋があるので、そこに面していると思ったが、ちょっと違っていた。角地には同じように古い作りの山本館が在り、それをL字型に囲むようになっており、Lの頭の部分か最上階からしか湯畑は見えない。Webで予約をする時からそれらの部屋は埋まっていたので、泉游亭という新館の空き部屋を確保した。
入口は狭い道路に向かって広々と開いている。正面に木格子に囲われた帳場が在る。雰囲気は旅籠。上がり框にはスリッパは無く帳場前の広間は畳敷きになっており、素足のままそこに上がり、投宿の手続き。それから同じように畳敷きの廊下を通って中2階の部屋に案内される。部屋は寝室が洋風の二間続きであることは、予約時の写真で承知していた。しかし、居間に入って驚いた。何とも妙な和洋折衷である。部屋そのものは和風だが、窓際は全て低いソファー風の椅子が作りつけられている。このアンバランスは全く予期せぬものだった。何故こんな?と自問して、思い当たることがあった。Webの口コミに外国人が多数投稿しており、ほとんどがその快適さを褒めていたのだ。彼らがこの部屋でTVを見たり、語り合うには座椅子では辛いのだ。ただ、日本人にはどうも・・・。
食事の前にひと風呂。“(吉宗ゆかりの)御汲み上げの湯”へ出かけてみる。先客は一人、入れ違いだった。洗い場も浴槽も完全に近代風だが湯船を囲む壁は檜造り。まずまずの雰囲気だ。湯はかけ流しで清潔感もある。しかし、湯畑で見た湯ノ花は全くないし、硫黄の匂いが全くしない。旅館の案内には、館内で一旦貯えて湯船に供給とあったが、これも伝統なのだろうか、それとも外国人向けサービスなのだろうか。チョッと物足りなさが残る。次に露天風呂に移ってみる。一等地だけに周辺は建物に囲まれているので、頭の上までほとんどよしずで覆われ、青空が僅かに見えるだけ。翌朝は男女入れ替えで、そちらの露天風呂に入ったが、こちらの方がまだ開放的であった。ここは温泉が目的だっただけに、“「今一つ」の感だった。
歳をとってからの旅で、いつも気がかりになるのは食事の種類と量である。2食付きの場合、普通のプランに従うと種類や量が多すぎて、食べ切るのも残すのも辛いことがままある。だから最近は質重視の“控えめプラン”の有無も宿泊先を選ぶ大事な条件になっている。幸いここにもその種のメニューがあったので、それを選んだ。焼物・煮物・造りなど概ね懐石料理、メインは上州牛の石焼。山菜などは別にして、おそらく地場のものはこれくらいだろう。期待していしていたのだが、やや硬く味も充分とはいえなかった。
部屋へ戻り大きな液晶TVを点けてみた。右の端5センチ位のところに黒い縦線が何本か走っている。些細な故障であるが、サービス業として「観るのに障害はない」と放置してはならないことだろう。ちぐはぐな和洋折衷、その改築も影響しているのか電気のスウィッチ類の配置や、機能(源が消えたり、部分で切れたり)が分かりづらかったり、何か細部の気配りが欠けている。従業員のサービスに全く不満が無かっただけに「もしかすると老舗も経営が苦しいのかなー」そんなわびしさが残る旅館であった。
(写真はクリックすると拡大します)
(次回;渋峠を越えて)
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