今月は下記の1巻2冊だけである。おそらくこの半世紀で最も本を読まなかった月に違いない。理由は10月4日に長女のところに二人目の孫(女児)が誕生、生活が一変したからである。二つ隣の区に住むため、長男を我が家に連れてきた。彼の面倒を見ることが私の役割である。3年制幼稚園の年少クラスへの送迎をはじめ、8時過ぎの就寝までその子のお相手。とにかく片時もジッとしていない。夜はクタクタでとても長い時間読書を続けられる状態ではなかった。8日からは長女、新生児も加わりにぎやかで楽しい時間を過ごした。 嵐が去ったのは29日である。
ここに撮影数日前4歳の誕生日を迎えたばかりの初孫と生後2週間目の二人目の孫をご紹介します。
<今月読んだ本>
1)CIA秘録(上、下)(ティム・ワーナー);文藝春秋社(文庫)
<愚評昧説>
1)CIA秘録
単行本が出た時(2008年11月)から読みたいと思っていたが、売れそうな予感がしたので多分文庫本になるだろうと購入を控えていた。歴史ノンフィクションだけに、その間の時間が価値を減ずることは無かった。先月読んだ「レーニンの墓」に続き、世界をそして歴史を動かすと言う点において、またスケールにおいて現代史に双璧を成す著書と言える。著者がいずれも米国人のジャーナリスト(新聞記者)であることは偶然ではなく、こう言うテーマに取り組めるのは、超大国であることと長い歴史や民族に縛られない新しい国であることと無縁ではなかろう。読後感を一言で言えば「アメリカ観が一変した」
ケネディ(JFK)の人気は依然わが国では高い。よく政財界人が彼の名言(国があなたのために何をしてくれるかではなく、あなたが国のために何ができるかを)を引用したりしている。60年安保の年は大学3年生だった。その年の晩秋JFKが大統領に当選、卒業の年の62年2月には弟のロバート・ケネディ(RFK)が母校にやってきた。講堂に入れぬ学生が広場を埋め熱烈歓迎だった。理想に向けて邁進する若い国家の若い指導者の誕生を我がことのように喜んだ。しかし、この本を読んでこの兄弟が歴代大統領の中で最もCIAを違法(RFKは司法長官である!)に活用し、自分たちの政策実現と名声のために秘密工作を行っていたかが露わになる。その仕返しの一つがあのJFK暗殺事件で、そこには兄弟が目論んだカストロ暗殺工作が深く関わっていた可能性がある。それをCIAの一部がつかむのだが、工作の存在が表沙汰になることを恐れた上層部に握りつぶされる。兄弟の表裏はまるで違うのだ。そして理想を声高に唱える国家の実態も。
正式なCIAの誕生は、1947年に成立した国家安全保障法による(前身は戦時対ナチ諜報を行っていた戦略事務所(OSS)。戦中のこととて“何でもあり(虚言から殺人まで)”の世界だった。その遺伝子が受け継がれる)。「第二のパールハーバーを防止せよ」が設立目標である。そしてCIAの役割が大きく変わるのは2004年12月各諜報機関を統括する“国家情報長官”を設ける法律が成立し2005年CIA長官が兼ねていた“中央情報長官(Director of Central
Intelligence)”が廃止された以降である。今や大統領の耳目・手足として暗躍するあの組織(とは言っても大統領によってCIAの活用内容は大きく変わる;長官でも閣僚の地位を与えられる者から一度も単独でプレゼンテーションの機会を与えられない者までいる。一方で平気で大統領や議会も騙す)ではなく、政府の一情報収集分析センターに過ぎなくなっているようだ。しかし、新しく設けられた国家情報長官も必ずしも上手く機能しておらず、そこに危機感を感じた著者はあとがきの最後を「もしアメリカの将来の繁栄を願うなら、われわれには最良の諜報が必要である。敵をいかにして知るかを新しい世代に教えていくことから始めたい」と結んでいる。その必要性を訴えるために本書が書かれたということであろう(こう言うことを主張するジャーナリストがいる国が羨ましい)。
本書はトルーマンからブッシュ(ジュニア)までの歴代大統領の時代を6部にわけ、それぞれの大統領と現代史に残る事件(ベルリン危機、ハンガリー動乱、ヴェトナム戦争、キューバ危機などから中東・中南米での政府転覆、同時多発テロ、北朝鮮問題、イラク戦争まで、また60年安保時の自民党との関わりなども一章割かれている)とCIAの関係を、公開資料とインタヴュー(元CIA長官だけでも11人)で克明に調べ、両者の微妙な関係を事件毎に明らかにしていく。その努力(30年かけている)の跡は上下巻1200頁の内400頁(1/3)を占める“著者によるソースノート”にいかんなくあらわれている。これは単なる引用文献リストではなく、引用の背景までもが記されているユニークなものである。
それにしても、諜報活動ではヨーロッパ(特にソ連;KGB、英国;MI-6)ははるかに高質(狡猾)で足下にも及ばないことを幾多の事例で示され、サスペンス物(小説・映画)のCIAが如何に幻影であったかを思い知らされたのは残念であった。
(写真はクリックすると拡大します)
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