情報システム子会社、システムプラザ(後に東燃システムプラザ;略称SPIN)の設立準備とその後の変遷については、本ノートの別テーマとしていずれ詳しく連載していく予定である。ここではSPIN誕生とTCS(Tonen Control System;高度プロセス制御システム;IBMのACSと横河電機のCENTUMから成る)の関わりに留めて書いていきたい。
新会社設立には種々の問題があるが、先ず「どんな会社にするか?」を描かなければならない。一方に今までやってきた東燃グループ内の各種サービス(事務系システムの開発運用を含む)がある。他方にTTEC(東燃テクノロジー)で始めたTCS関連外販ビジネスがある。それぞれを従来通りにやるのならば新会社設立の意義はほとんどない(役員や管理職ポストを見かけ上増やすことくらい。わが国企業の多くにこの形態の子会社;受け皿会社が無数に在った)。こんな会社は作りたくない。新規事業として外へ伸ばしたい。経営層も情報システムのメンバーもここは同じ思いであった。モデルとなるのはやはりTCSビジネスだった。
TCSビジネスの特色をまとめると;本業に密着する適用分野で経験・知識が最大限に発揮できる;基幹システム(IBMのACS)の高い競争力とそのシステムに対する深い理解;それによって他社(特に規模の大きなIT会社)に対して対等以上に戦える;従ってきわめて割りの良い収益率になる。
成長著しい分野であるにも拘らず、情報サービス業におけるシステム開発(特にプログラミング)は“汗かき仕事(英語でもSweat Shopと言う)”の圧倒的に多い業種。しかし、このTCSビジネスモデルは、それとは一味違うサービスを提供できる。つまりIBMへの販売活動支援・通信パッケージの販売・顧客へのシステム設計・開発ノウハウ提供など、より付加価値の高い仕事をすることにより、一人当たりの売上げや利益を高いレベルに維持できるのである。問題はこのモデルをTCS以外の分野(特に事務系統)に拡大できるかどうかである。市場規模が大きく量的に伸びているのは何と言っても工場外のシステムであるからだ(さらには金融・流通など製造業以外の分野)。
数多ある競争者に打ち勝ち、発注者の仕事の原点(計画検討)に近いところから受注するためには、それなりの工夫が要る。強みは何と言ってもユーザー知見。業種・業務それにプラットフォームとなるコンピュータの絞込みが鍵と読んだ。石油・石油化学がコア、次いで化学産業、その外側に広義のプロセス工業(鉄鋼・紙・セメントなど)を置き、業務は工場や生産設備を対象とし(プラント運転、生産管理、設備管理、品質管理、原価管理など)、組立て加工業さらには非製造業は余ほど条件が良くなければ取り扱わない。対象コンピュータはグループで使われているIBM・富士通の汎用機に限定、既に始まっていたダウンサイジングやネットワーキングへの取り組みも、この両社の汎用機周辺に留まるようにした。またプロセス工業の会計・税務処理は物性値(流量・温度・圧力など)を金額に変えてゆく独特の処理を伴うので、技術分野に限らず事務分野でも差別化因子となるのでここを重点的に売り込んでいくことにした。
このような新事業計画が固まったのは1985年新春。経営会議等で何度もダメ押しをし、修正しながら、やっと設立にたどり着いたのは6月。7月10日新会社「システムプラザ株式会社(SPIN)」が発足した。
(次回予定;“大転換”ダイジェスト)
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