2012年3月30日金曜日

決断科学ノート-111(自動車を巡る話題-5;自動車行政)




若者の自動車離れが言われだして久しい。しかし、これは若者だけの現象だろうか?いまやほとんどの家庭に車があるものの、“クルマを持つ楽しみ”を語る人が、若者に限らず。明らかに減っている気がしてならない。特に“運転の楽しみ”にそれが顕著だ。そこには、わが国交通史とそれを踏まえた諸政策が影響していると見る。
車に関わる政策には、交通(輸送)、道路、安全、環境、産業(自動車生産)、財政(税)、エネルギーなどがある。これらの政策立案に際して、自動車、特に自家用乗用車と言うのはどのように捉えられ、扱われてきたかである。先ず取得・運用・維持のための費用として、取得税、重量税、ガソリン税(軽油税)、強制保険・任意保険、車検・法定点検費用、通行料、駐車料金、免許更新料などがかかる。発展途上国や特殊な国家(シンガポールのような都市国家)を除けば、高額の費用負担を強いられている。次いで運転の利便性に関しては、道路整備(高速道路網ばかりで無く、歩道との明確な分離、バイパス整備などを含め)の遅れや、信号の多さ(歩行者にはありがたいが)、軽自動車から大型トラックにまで無制限な車線利用(ヨーロッパでは大型トラックはセンターライン側の追い越し車線は使えない)、駐停車スペースの少なさなどが挙げられる。
ここから見えてくるのは、“クルマは贅沢品”と言う自動車黎明期の考え方、その大本ともいえる馬車の無かった独特のわが国交通史、更には土地所有に対する異常な私権の強さなどである(本来国土は国民全体のものである)。特に、馬車交通の歴史を持たなかった特異な歴史の影響は大きい。ヨーロッパ大陸に張り巡らされたローマの道や駅馬車が荒地を疾走する西部劇に見るアメリカとの違いは決定的だ。結果として、彼の地では考えられない、“車は所有して欲しい。しかしあまり乗らないで欲しい”という政策が出来上がっていくのである。これでは自動車成熟社会で“持って・乗って楽しいクルマ”は生まれてこない!(経済的に、クルマに手が届くか否かギリギリの社会では、どんなクルマでもそれなりに憧れである)
確りした自動車産業を保持することは、当面わが国にとって最重要経済課題の一つだ。一方で自動車も生産技術だけで差別化される時代は終わりつつある。コモディティ化は後進のメーカーにも先行者キャッチアップの機会を与える。一味違うクルマ(乗用車)を作り上げるための材料は、その国の自動車の使い方・乗り方から生み出される。部分的に速度制限の無いアウトバーンを持つドイツの車はスピードばかりで無く、一定期間当りの走行距離もわが国とは比較にならぬくらい長い。当に自動車を使いこなしているのだ。そして、この日常の使い方とそこからの反応が、独特のステータス・シンボルとして結実している。
エコは新しい競争環境でもある。山がちで狭隘な国土も見方を変えれば有利な条件だ。ヒルクライムと言う、山登り専門の自動車レースもある。「日本製のクルマは山道では滅法強い!足回りを中心に安全策も確りしているので、急峻で狭い山道でのハンドル操作も全く恐怖感がない。降りでエネルギー回生を行うので燃費も抜群だ」と言うような評価がされれば、差別化因子、更には日本車のキャラクターとして世界に認められていくのではないか。そのためにはもっと国内でユーザーが乗りこなし、メーカーにフィードバックするシステム(メディアを含む)が必要だ。
自動車行政が、乗用車のユーザーを増やし、これを積極的に使い込み、楽しんでいくような方向に抜本的に変わるよう期待したい。軽自動車とミニバンをいくら作っても国際競争には“絶対に勝ち残れない”のだから。

1 件のコメント:

No.703 さんのコメント...

どうもこんにちは。車好きMBAホルダー34歳です。

そろそろ自動車税で税を取るという仕組みも変わってくるかもしれませんね。私はそうなることを願っております。

以前とは違い先行き不透明な経済と、明らかにバブルの頃のような成長が望めない中で、10年後はこれだけ稼いでいるだろうから、車を買っちゃえ!というふうにはならないんでしょうね、さみしい限りです。(私は一人でバブルのように車を買ってます。時代に逆行し頑張って戦ってます。僕らが買わなかったら経済が潤わないですもんね!)

先が見えないということは不安にさせますし、特に慎重な日本人の体質からいうと思い切った購買行動に出るとは私は思えないんですよね…。

ある程度の安定した地位と資金を持つ人が、すべてを捨ててチャレンジするぜ!!ってなかなか思わなくないですか?

10人中8人がエコエコ行ってれば、じゃあ自分も、、となると思われます。そういう風に育ってますし。

それにその他の嗜好品も増えてますし、PC、スマホ、ゲーム…。昔のように車だけあった時代とは違います。悲しい限りです。

私は横にかわいい女の子を乗せて高級車でかっとびたい&お金があったら使っちゃえ!的な人間ですけど。

とても日本に貢献してると思うんですけどね。

ですけど、たぶんこの流れを止めるのはなかなか難しいのかなぁって思ってます。

打開策としては、海外からの移民をたくさん受け入れ消費を変えるとか、中学校くらいから留学制度を入れたり教育を変えるとか、、

あとは税の仕組みを変えて買いやすくするとか、痛車をもっと流行らせて、アニメや音楽と車を関連づけさせるとか、、

どうでしょうか?



車に乗るとその国の文化・交通事情が分かりますが、あのブレーキの利き、アクセルの具合とかせせこましい感じが日本だなぁと感じます。

信号の多さ、走ることに適してないインフラは特に関東で顕著で、名古屋、大阪などはそうでもないと感じます。自動車産業の街なんかは比較的走りやすいです。