10.高野山への道
近鉄吉野駅に近い臨時駐車場を出たのは3時過ぎ。ここから高野山までおよそ60km、1時間半位の距離だ。吉野川(和歌山に入ると紀ノ川)沿いの道から高野山に上るルートは三本ある。大型バスが通るのは笠田(かせだ)から大門口橋を渡り480号線をひたすら走る道だ(青)。このルートは新入社員研修(丁度50年前の同じ頃)以来何度か通っている。交通量が比較的多く“走りを楽しむ運転”は期待できない。計画段階で第一候補としたのは橋本から入る371号線であった(ピンク)。この道は高野山から龍神に抜ける道につながり、翌日はこの後半部分を行くことになるので、全体を通して走ってみたいと思ったからである。駐車場を出る前にカーナビに“一乗院”を入力してルートを調べると、これが第一案として出てきた。最短距離なのだ。
吉野駅から近鉄に沿って道は緩く北に下りながら吉野川に向かっていく。天気は予報通り曇り空に変わってきている。高野山は雨かもしれない。1kmほど行った吉野神宮駅のT字路は左へ進むのがメインである。そこから吉野大橋を渡って今朝来た169号線を西に戻るのだ。しかしカーナビはここで“右です”と言う。朝のトラブルが頭から離れない。おまけに地図上の矢印は上向きではなく、妙な方向を向いたままなので、ここはナビの指示通り右折する。やがて道は細くなりすれ違いも出来ないほどになっていく。次の指示は“左斜め手前方向です”ときたが、道は鋭角で左折するのでとても曲がれない。Uターンできるところまでしばらく進み、折り返してこの左折路に入った。先には貯木場が見え工場内に入っていくように思えたが、中を抜ける道がありその先に橋が架かっている。上市橋という吉野大橋の一本上流の橋だった。これを渡るとやっと169号線に出ることが出来た。吉野大橋は長蛇の列、カーナビは渋滞をバイパスしてくれたのだが、とても普通に走れる道ではなかった。
169号線は途中で奈良方面に向きを変えるので、川沿いに西進するには370号線に乗り換え、五条で和歌山に向かう24号線へと道を採る必要がある。この少し手前でナビが“新しいルートが見つかりました”と言ってくる。吉野を出たときのオリジナル・ルートが一旦この辺で自動車専用道(京奈和道)へ北西に廻り道を採る五条迂回路だったので、ルートを確認せずに直進を期待して“新ルート”を選択した。紀ノ川を橋本橋で渡るところまでは予定通りだった。そのままナビの言う通り進んでいくと24号には入らず依然370号線を進んで行く。本来はどこかで371号線へ入る予定だが、時々 “高野山”の標識が出てくるのでそのまま道を採っていると、九度山で“祝 370号線国道昇格”と言う看板が出てきた。確かに国道にしては幅が急変したり、変な曲がり方をする所がいくつもあったが、そんな事情だったのだ。371号線への分岐点は既に遥か後方、前進あるのみ。この道が高野への第三の道であることを知らされる(緑)。
山へ入る頃には雲も厚くなり、鬱蒼と茂る木々に覆われた道は薄暗く、加えて昇格した新米国道は路面や道幅が未整備で待避所以外ではすれ違いも出来ない。明るければともかく、いくら山岳道路が好きでも敬遠したくなるような走行条件である。せめてもの救いは交通量が極めて少ないことである。それでも一度だけ材木運搬のトレーラーと行き違い、バックを余儀なくされる。とうとう雨も降り出してきた。すると突然ピッと音がして中央の計器に小さな赤ランプが点灯した。燃料補給を警告するものだ。
長距離ドライブ行の計画を検討する際、ガソリン補給地点についてはかなり綿密にチェックする。満タンで500kmは先ず問題ないので、今回の場合亀山・天理IC周辺と奈良南方(24号線、169号線)のエッソ/モービル/ゼネラルSSはすべて確認しておいた。しかし、高速道路の走りが順調で、奈良のホテルへチェックインした時、車載コンピュータはまだ250km近く走れることを示していた。奈良から吉野経由で高野まで行っても、その半分以下の距離である。後の行程を考えれば高野山のゼネラルが最適。すっかり油断していたのだ!赤ランプがついてもまだ20km程度は大丈夫だと思うが曲折する山道の上りゆえ絶対安心とはいえない。こんなところでガス欠になったらどうすればいいんだろう?不安が募る。やっと平坦な道になったら今度は霧や雲が現れる。高野山を象徴する大門が見えた時どんなにホッとしたことか。街の中心にある駐車場を廻って総本山、金剛峰寺の角を左折して今夜の宿泊所、一乗院に無事たどり着いた。やれやれ。時刻は5時丁度だった。
(写真はクリックすると拡大します)
(次回;一乗院)
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