2012年7月6日金曜日

歴史街道を行くー吉野・高野・龍神を走る-(16)




16.南部(みなべ)から日の岬へ
421日(土)、天気は朝から薄日がさし、まずまずと言ったところである。上御殿前の駐車場を女将さんと仲居さんに送られて出発したのは9時少し過ぎた時刻。今日の最終目的地は和歌山駅に隣接する、ホテルグランヴィア和歌山だ。距離は140km程度、5時間はかからない。しかし、ルート決定までにはいささか時間がかかった。後半走る道はよく知った国道42号線(熊野街道)、3年前の紀伊半島ドライブでも走っているからだ。
私は和歌山工場勤務時代何度も訪れているが、家人が初めての観光スポットを選び出すと、紀伊半島西端となる日の岬、紀州徳川家の菩提寺、長保(ちょうほう)寺、8世紀に唐僧が開き、桜の名所でもある紀三井寺(きみいでら)などが候補地として浮かんできた。いずれも熊野街道から近いので立ち寄りに格別時間を要する所ではない。これで後半部分は決まった。
前半、龍神から海岸線を走る熊野街道までは過疎地帯を走る山岳道路。ここは今回の旅で運転を楽しむための山場と期待している。御坊へ出る道が二本、南部へ向かう道が一本。いずれを選択するか?一番北ルートは県道26号線、和歌山を代表す三本の川(紀ノ川・有田川・日高川;いずれも有吉佐和子が小説に書き残している)の一つである日高川沿いに進む。真ん中を走るのは、紀伊半島中央部を三重・奈良・和歌山と横断している国道425号線。最近の地図で見ると、龍神以西は国道としてよく整備されているように見える。残る一本は南部へ出る国道424号線である。この道は多分42年前逆に走っているはずだ。日高川に沿う道は、ゴルフ場が在ったり、前回訪れた道成寺を通っていくので、かなり開けた様子、面白味という点で先ず落ちた。南部ルートは一旦南へ下り、レの字型に北上するので遠回りになり、第一候補にはならなかった。しかし、出発数日前「今回のお土産をどうするか?」を考えている時、“南高(なんこう)梅”のことが気になりだした。前回はみかんを食材にした菓子と湯浅の醤油、いずれも和歌山ならではのものだ。「今回は南部の梅干!」(“南高”;南部高校農業科が開発した、南部高田地区の梅を使っている、の二説がある) これで424号線に決まった。
龍神を出る時目的地を道の駅、“みなべ梅振興館”にセットした。Webで“梅干の製造・販売所”を調べたら、みなべ観光協会のHP40数軒が列挙された表が出てきた(商品紹介へ展開できる)。あまりの量に何処で何を買うべきか見当もつかない。口コミなどを基に選択肢が多そうなここにしたのだ。
424号線は想像以上に厳しい道だった。道幅は狭く路面も荒れている。加えて春先の大雨で応急工事が施されているような所が諸処にある。迂回指示に従うと、その先の急斜面が抉り取られ、茶色の山肌を見せている。小川を渡る橋は仮設、一方通行で路面高の低い車は腹を擦りそうだ。起伏とワインディングを楽しむ運転どころではなかった。“梅干”を考えなければ第一候補の425号線を行くべきだったかもしれない。
梅振興館は期待通り、加工方法、パックサイズ、味付けなどいろいろな梅干が揃っていた(安い訳あり商品もある)。ほとんど試食可能で、吟味して選べるのが良い。自宅用にはやや甘口の訳ありを、年配者が多い友人達には伝統的な味付けのものを購入した。
梅振興館から阪和自動車道のみなべICに近い。そこから御坊南ICまで行き、42号線を少し走り、海岸線を防砂・防風林に沿ってしばらく行くと、岬へ向かって長く延びる煙樹が浜に出る。この浜は砂利で出来ており、潮の満ち干が奏でる独特の音で知られる。夏はキャンプで賑わうこの一帯もまだ静かで、その響きを久し振りに味わうことが出来た。昼食を計画していた岬はさらにこの先、突端の丘には昔は無かった国民宿舎やカラオケ施設が在ったが、観光客は全く居らず、明るい日の下に寂寞感だけが漂っていた。
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(次回;長保寺・紀三井寺)

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