7.シティホテル吉田屋
ホテルへのチェックインは4時過ぎだった。玄関前のBrabus
Benzはどこかへ片付き、川崎ナンバーのクルマが隣に止められていた。フロント・ロビーに入ると誰もいなかったが、直ぐ奥から和服の中年女性(おかみさん)が現れ、チェックイン手続きを済ますと、ロビー奥につながる風呂の説明をしてくれる。どうやら大浴場ではなく(客が多い時のみオープン)、個人用で空いているときに入る方式らしい(中から鍵をかける)。次いで建物の全体説明。ロビーの右が古くからある旅館、左側がホテル。ホテル側の一階は“美濃錦”と言う料理屋で、明日の朝食はここで摂るとのこと。
一緒にエレヴェータで3階に上がり部屋へ案内してくれる。部屋は北東の角で部屋から西日に明るい八幡城が望める。部屋の広さはビジネス・ホテルのツインに比べてかなり広く、ベッドもセミ・ダブル、圧迫感が無いのが良い(後で非常口案内図を見るとホテルは9室で、この部屋が一番大きかった。なお旅館の方は6室である)。
この部屋にもユニット・バスがあるのだが、やはり広い風呂に入りたい。早速下の風呂へ出かけてみると残念ながら先客がいる。おかみさんに連絡を頼み一旦部屋に戻る。20分くらい経って連絡が入る。出かけてみると、数人は入れる広さがあり、ゆったり出来るのだが、6時からの夕食なのであまり余裕が無い。ここがこの宿の唯一不満が残ったところである。
ホテルを予約する時、始めは宿・食分離を考えたが、町の食事処案内を調べると、結局料理もここが一番評価が高かったので、2食付のプランにした。旅館側に泊まると食事は“いろり部屋”で摂るとなっているが、ホテルの場合は2階の料亭個室になる。降りていくと仲居さんが部屋に案内してくれる。幾部屋かあるようだが、人の気配はしない。ホテルの宿泊客は遅いチェックインか食事不要なのかもしれない。
「お飲み物は?」の問いかけに、日本料理が売りの所だけに、一瞬“地酒”と思ったが、長丁場のドライブと暑い日中の街歩きで生ビールを所望したが「まだやっていません」の返事。鮮度が勝負の生は客の少ないこのシーズン、ここまで運ぶ輸送費も考えると商売にならないのだろう。止むを得ずビン・ビールで我慢する。
料理はさすがであった。先ず、一つ一つタイミングを見て運んでくる。これができない日本旅館が最近は多い。食材はシーズンであれば鮎が中心(塩焼き、味噌煮、刺身、雑炊など)となるのだが生憎解禁になっていない(6月中旬)。代わりに鯉の洗い、あまごの塩焼き、山菜のてんぷら、鯉と野菜の炊き合わせ、ゴマ豆腐、飛騨牛のミニ・ステーキ、それにここの起源ともいえるうなぎの蒲焼などほとんど地元の食材を使った料理である。蒲焼は関東風に蒸してから焼くスタイルではなく、生から確り焼き上げる方式なので、やや皮が硬く、好みとしては今ひとつだったが、これもその土地を知る上では悪くなかった。2時間かけた夕食の後は一日の疲れがどっと出て、爆睡するだけだった。
翌朝朝食を摂りに“美濃錦”に出かけると、夫婦連れが一組、ビジネスマンらしい人が二人、別々に食事を摂っていた。我々の後から若い女性の二人組みがやってきた。多分昨晩泊まった客の全てであろう。朝の給仕をしていたのは、フロントで対応してくれたおかみさん一人、旦那はどうも厨房にいるらしい。オフシーズンは、昨晩の仲居さんを除けば、ほとんど二人でこの旅館・ホテルを切り盛りしているに違いない(料亭の板前は別にいると思うが)。家族+αでさっぱりしたサービスと美味しい料理を供してくれたここを選んだことは正解だった。
チェックアウトの時、旦那に例のBrabus
Benzのことを聞いてみた。「実は実家が外車ディーラーでして」が答えだった。あれこれ乗り継いでこれに至ったのだそうだ。「話の続きを聞きに今度はシーズンに出かけたい」そんな気分にさせてくれる宿だった。
(写真はクリックすると拡大します)
(次回:美濃街道を行く)
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