17.西村屋本館
宿泊先の選定基準については今までにも縷々紹介してきたが。城崎温泉と決めた時点でホテルは考えなかった。実はここにもホテルがないわけではないし、西村屋はホテルも別な所で経営している。しかし温泉街からは距離もあり街歩きも外湯も楽しむことは出来ない。
先ず観光協会のHPで全体をレビュー。現在約80軒の旅館があるのだが、大正年間の北但馬地震で町は全壊したとある。従って老舗と言っても建物はそれ以降となる。楽天やじゃらんのページに移って“おすすめ順”などで5,6軒に候補を絞込み、それらのHPで設備や提供プランを調べ、さらに口コミを参照してここに決めた。決め手の一つは安政年間創業、もう一つは「美味少量(量控えめ)」プランである。“食べ残すことは罪悪”と教えられてきた(そしてひもじい思いをしてきた)世代には、重要なサービスである。
冠木門と玄関の間にクルマ2,3台のスペースがある。しかしどう見ても玄関へのアプローチ、とても駐車場とは考えられない。門前にクルマを停めて降りかけたところへ番頭さんがやってきて「中へ入れてください」と言うので玄関前に移動させると、「今日は車庫が空いておりますのでそちらにお預かりします」とのこと。荷物を降ろすとクルマは表の通りへ消え去った。
若い仲居さんの案内で玄関を入ると、正面は広くて磨き上げられた板敷きのロビー・ラウンジ、その先の大きなガラス壁越しに見事な庭が見える、左側にフロント、右側には土産物コーナーがある。それぞれに担当者(女性)が一人づつ、この地では部屋数の多い(34室)旅館だが、人の気配はそれだけ、上品で、落ち着いて、静かな雰囲気に「どうやら選択は間違っていなかった」の感を持つ。
案内された部屋は1階で、踏み込みの間があり、あとは広縁付きの8畳。広縁は先ほど玄関から見た庭に面している。壁や柱・天井、全ての造りが伝統的な純和風(除くトイレ・洗面)、新建材など一切使われておらず、時代を経た日本家屋の趣がよく残っている。それでいて老舗にありがちなかび臭さなど全くなく、清潔感も申し分ない。周辺は木立の茂る小山。
我々の泊まった部屋は一間だが二間構成もあるし、自室に露天風呂がある部屋もいくつかある。また2階には中庭を見下ろす特別室もある。チョッと変わった部屋としては展示室があり、土地の文化的作品(焼き物など)、この旅館の歴史を語る数々の品々や写真などが展示してある。地震の前と後の本館の違いなどもここで確かめることが出来る。私が「オヤッ!」と思ったのは、ここの当主の一人がわが国民間航空の歴史と深く関わっていることを知ったことである。民間航空の黎明は、一つは速報性を求める新聞社の新兵器、もう一つは観光や定期飛行への利用である。この後者の利用、丹後半島から若狭湾方面の観光飛行・エアータクシー、それに関西と東京を結ぶ定期航空路開拓に、川西航空(現新明和工業;辛坊氏救出に活躍した海上自衛隊のUS-2開発・製作者)に協力して当っていたことである(いずれも事業としては失敗しているが)。
部屋へ入ると、若い仲居さんが館内・室内設備や外湯の利用方法などを説明してくれ、夕食時間や飲み物の確認、明日の朝食の注文をとってくれる。何と言っても先ず温泉だ!
大浴場はロビーの土産物コーナーの先に二つあり、時間帯によって男女が切り替わるのはどこも同じである。早速出かけてみると誰もいない。この時間の男湯は四角い総檜の浴槽、大浴場といても4,5人の規模で、こじんまりしている分落ち着く。小さな中庭があり、そこに露天風呂もある。どちらも貸切りで、ここまで全て二重丸。あとの食事も楽しみだ。
(写真はクリックすると拡大します)
(次回:西村屋;つづく)
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