2013年8月13日火曜日

美濃・若狭・丹波グランド・ツアー1500km-22


17.西村屋本館-2
計画検討時は2月、3月。この辺はカニのシーズンの終わりに近づいているが、プランにあるのは当にカニ料理のオンパレード。「美味少量」の写真にもそれが写っている。「やはり日本海は寒いときに限る!」の感を強くした。4月以降は「季節の会席料理」とはあるものの、具体的な内容は分からぬまま、それなりの海の幸を期待して、このプランに決めた。
部屋へ案内してくれた若い(高校生のアルバイト?)仲居さんは、食事について、夕食時間、その際の飲み物、翌日の朝食の選択(和・洋)について丁寧に説明・確認していった。朝食は案内にあった“焼きたてアツアツの地物一夜干しカレイなど日本旅館の朝食をお部屋にてお楽しみください”に期待して和食とした。
一風呂浴びて部屋で休んでいると6時過ぎいよいよこの地のメインイベント、夕食が始まる。給仕してくれるのはこれも若い仲居さん(先ほどよりはやや年長)だが、こちらはプロの風格ができつつある。前2ヶ所(郡上八幡、虹岳島)はおばさんがパートでやっていた感じだったが、ここは若い人をキチンと育てているようだ。最近の日本旅館では珍しい。
食前酒は冷たい緑茶のワイン割り。風呂上りの喉と天橋立の抑え気味だった昼食の胃袋を元気付ける。本来はこれに続いて日本酒で料理を味わうのがピッタリなのだろうが、生憎私はビール党それも生があれば先ずそれをググーッとやりたい。蛍烏賊の味噌和え、若鮎塩焼き、小振りの鱚(キス)寿司などきれいに並んだ前菜に申し訳ないような気分で、専ら喉越しの楽しみを味わう。椀物は玉子豆腐と穴子焼きが具になるこれも淡白で上品な味わい。炊き合せは今日の朝市で調達した地の野菜。昨晩の虹岳島と違い、絶妙のタイミングで運ばれてくる。
シーズンであればこの後はカニであろう。しかし5月は鮑(あわび)であった。洋風にグリルされたそれはビールに良く合い、カニよりもこちらの方がよかったのではないかとの感を抱かせる。いつもならここら辺りでビールのお代わりになるのだが、食後の外湯巡りを考えて今夜はペースを落としている。箸休みで少量の紅ガニがあった。主役の松葉ガニとは似ても似つかないが「カニを食した」と言う安心感が去来した。休みの後も魚である。鰆(サワラ)の巻き焼き、筍と貝柱の田楽焼き、それに地魚の丸干し。全体に量が抑え目なのでまだ腹八分目と言ったところである。
最後の山場は但馬牛ロースのしゃぶしゃぶ。ご飯や香の物、赤出しと伴に味わい、シャーベットと果物で終わる。私にとっては「美味適量」 大満足であった。料理そのものも第一級だが、何と言ってもスケジューリングが素晴らしい。遅からず早からず、熱からず冷たからず。味と“適量感”はこのタイミングのよさと無関係ではない。料理を中心とした接客サービスの奥義を熟知して、それを供することが出来る経営はさすがである。
8時前に全て食事は終わり、外湯巡りを兼ねて街歩きに出る。フロントはYシャツ姿ではあるが専任の警備担当者に代わっていた。彼が翌朝まで勤務するようである。これは伝統を売り物にする旅館では初めて体験することであった。歴史を誇る老舗旅館でも経営形態は時代に合うよう変えてきているのである(だからこそ生き残れる)。因みに今回泊まった3軒で旅行Webページ(楽天、じゃらん、JTB等)からそのまま入り、予約できたのはここだけであった。
実は3軒のうち値段はここが一番高かったし、城崎温泉でも高い順のトップにあった(その一番安い部屋に泊まった)。しかし、料金を含む総合的な満足度から言って“断トツに良かった”のがここである。再びこの地方を訪れる機会があったら、是非またここに泊まりたい。6年のグランド・ツーリングを通じて、こんな感を抱かせてくれたのは志摩観光ホテルとここだけである。
(写真はクリックすると拡大します)


(次回:丹波篠山を通る帰路)

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