2013年10月29日火曜日

フランス紀行 南仏・プロヴァンス・パリを巡るー(8)


8.エズ村と香水
コート・ダジュールに面する陸地は石灰岩の岩山がつづく。この地で大人口を養う農業を営むのは難しい。交通が発達しリゾートとして繁栄する以前は、果実と海産物を採取するくらいの生活しか考えられない。そんな土地に“鷲の巣”と呼ばれる小さな村落が高い岩山の上に築かれている。その一つエズ村(土地の人はエザと呼ぶらしい)がモナコからニースに戻る途中に在る。どうもローマ史と深く関わるようで、頭の部分が涙滴のように丸い十字架(エジプト十字架)の教会があることから、北アフリカ(カルタゴ)との関係が深かったようである。10世紀にはイタリアのサヴォイア家の領地となり、プロヴァンスに拠るフランス勢の支配に備えて要塞化されそれが今日まで残っている。敵の侵入を防ぐため海からは見えないよう、山で隠れるように家々が造られているので長い歴史を残すことになったらしい。
4時前にモナコを発ったバスは途中から山道に分け入りつづら折れして断崖を登り、エズ村下の駐車場に止まる。村はこの辺りから始まりさらに上へとのびているが、あとは自分の足で登るしかない。80歳の老人を含め半数はここで待つという。石壁に挟まれた狭い石畳を少しずつ上っていく、左右には土産物屋や飲食店が続く。驚くことにこんな所にもホテルが在る(それもミシュラン二星のレストランがある)。家が途絶えるとあとは手摺を頼りに岩とサボテンのような植物が生える急な階段を登っていく。この辺りはエズ熱帯庭園、頂上は小さな城址だ。さすがに見晴らしはいいが、一体こんな城を落として何が得られるのだろう。
快晴の日にはコルシカ島が遠望できると言う展望台から下を見ると、山肌をぬうヘアピン続きの道路が走っている。モンテカルロ・ラリーを扱った「栄光の5000km」のロケはあんな所でやったのではなかろうか?歴史とは関係が無いところについ思いがいってしまう。
もう時刻は5時前、最後の訪問地はラベンダーを始めとするこの地方特産の花々で作られる香水や石鹸作りの会社「フラゴナール」だ。駐車場には“熊猫旅行社”と漢字で書かれたバスも止まっている。中国からの観光客が先に入っているようだ。昔からの石鹸製造機械や香水の調合方法の説明を受けると、あとに控えるのは直売フロアー。自社製品ばかりでなくブティックも併設されており、雑多な人種の女性客は老いも若きも目の色が変わってくる。全く関心が無いので駐車場に早々と退散。そこに何故か赤いフェラーリが一台。側の看板には英語で何ユーロか払うと付近を運転手付きでドライブさせてくれると書いてある。男性が連れを待つ間の商売なのだ!
あたりが仄暗くなってきた。あとはホテルに向かってまっしぐら、5時半にホテルにチェックイン。こうして長い長いコート・ダジュール観光の一日はディナーを残して終わった。
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(次回;ニースのホテルとレストラン)

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