20.パリ-10;セーヌ左岸
ルーヴルのカフェテリアで昼食を終え外へ出たのは1時過ぎ、とにかくこの建物は大きく、東西方向は3ブロックくらいある。北側に出たつもりだが、今いる位置が直ぐにわからない。ここからノートルダム寺院に行くには地下鉄に乗る必要がある。最寄り駅は北側ならパレ・ロワイヤル・ミュゼ・リヴォリ駅(1号線)、東側ならシャトレ駅(4号線)になるが、北側の通りのどの辺にいるのか分からない。しばし地図で確認していると、同じように地図を持って何やら探している日本人らしき若い女性が近づいてきて「ルーヴルはどこでしょう?」と関西訛りの日本語で訊いてくる。真横がそうなのに分からないのだ。「ここがそうですよ」と教えところで「この近くに地下鉄の駅ありませんかね?」と質問すると「この先にあります」と東方向を指さす。彼女はそこからここまで来たらしい。確かにシャトレ駅入口がそこに在った。
たった一駅乗ってシテ島駅へ。地下鉄の出口は小公園の中に在ったので、チョッと方向感覚を失ったが、標識(Cathedrale Notre-Dame)を辿って行くと目の前にあの初期ゴシックスタイルの巨大なファサード(正面)が現れた。とにかく大きい。カメラを最大広角にしても全容は納められない。この寺院は正面から眺めるもののようで、正面広場には階段状の観覧席が設けられ観光客は三々五々そこに座って、休憩を兼ねてその姿に見入っている。我々は先ず寺院内に入りその広くて暗い内部を見学する。ステンドグラスが素晴らしい。直径13m、とても日本の鎌倉時代にこのようなものが作られたとは信じ難い。屋根に飾られた怪獣(シメール)を観るには8ユーロ払い400段近い階段を登らなければならないので諦め、外の観覧席でしばし休息をとる。
休憩後は橋を渡って南岸へ出る。次の訪問先は“シェークスピア&カンパニー書店”、パリ到着の項で紹介した英語圏(主として英米)の書籍を扱う有名書店である。米国ニュージャージ州から移住してきた女性が1919年(第一次世界大戦後)に開いた店で、文学志願でフランスにやってきた英米人の若者が寄食しながら研鑽を励んだところとしてその名が知れるようになる。店の場所やオーナーは変わったようだが、仕事と生活の場(宿泊)の提供は変わっていないという。そのようにユニークな書店ゆえ、ここはヘミングウェイの小説「移動祝祭日」に登場したり、ノンフィクションの本(今月の本棚(今月の本棚-24;2010年8月で紹介)になったり、“ビフォア・サンセット”と言うアメリカ映画の舞台にもなっている。そのノンフィクションで知って興味を持ったことがここを訪ねた理由である。
店は神田の古書店のようで、書物が雑然と書架に並べられ、決して一流書店とは見えないが、我々同様観光ついでの客で賑わっていた。外国の書店で私が向かうのは戦史コーナー、それが直ぐに見つかった。日本ではお目にかかれない珍しいテーマの本が何冊もある。ここで本を買う予定はなかったが“Spies in the Sky”と題する第2次世界大戦時の英国空軍航空偵察の本を買い、表紙裏にシェークスピア像描いた店のスタンプを押してもらった。自分用唯一のフランス土産である(本書は次回「今月の本棚」で紹介予定)。
こんな本屋がここにあるのは、セーヌの左岸(南岸)がソルボンヌ大学のあるカルチェ・ラタンや文化人・芸術家が集うサン・ジェルマン・デ・プレなどに近いことと無縁ではないだろう。何となく北岸の繁華街とは違った洒落た雰囲気があり、この一帯はもう少し時間をかけて廻ってみたい所であった。
(写真はクリックすると拡大します)
(次回;パリ;つづく)
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