-八幡平・十和田・奥入瀬・八甲田・白神山地・鳥海を駆け抜ける-
4.八幡平ハイツ
八幡平は雪質の良いスキーリゾートとして古くから知られているところだが、新幹線が通るまではなかなか都心から出かけられるところではなかった。その新幹線も最寄り駅は盛岡だから、今でも決して便利な場所ではない。それもあるのかなだらかな高原地帯にリゾートホテルが林立するようなことはなく、アプローチはほとんど森の中を走る専用道路だし、大きな山小屋風の正面玄関の背後には雲に頂を包まれた岩手山が見えるだけである。迎えに出てくれたのは和服を着た仲居さん風の若い従業員、チョッと洋風のたたずまいにはそぐわない。中へ入ると完全にホテルの造りで、フロント、ロビー、土産物コーナーなどが広々した空間に配置されている。46室しかない部屋数にしてはコモンスペースが広いのが良い。チェックインの手続きを済ませると、今度は洋装のこれも若い女性スタッフが部屋まで案内してくれる。
客室や諸施設はロビーを中心に変形放射状に配置されており、予約した部屋は南西方向に延びる別館部分に在ってかなり奥だった。部屋の入り口は三和土を備えた一見和風玄関、入ると右側には一段高くなった10畳くらいの畳コーナー、ここには既に寝具が延べられている。真ん中には4人で食事ができるほどのテーブルがあり、吹き抜けの高い天井から小型のシャンデリアが下がっている。左側はトイレ・洗面それにヒノキ造りの風呂がある。風呂と部屋の間は透明ガラス!ブラインドが下ろせるのでプライヴァシーは確保できるが、ギョッとさせられる。こんな風呂場は1982年カリフォルニアとアリゾナの州境、レイクタホのリゾートホテル(カジノ付)に泊まって以来初めてである。どう考えても70歳を超えた老夫婦向けではない。板張りデッキテラスがあり、ここからよく整えられた庭(電柱があるのが欠点)が見下ろせる、天気が良ければ岩手山を見上げることもできるようだ。
夕食までは時間があるのでひと風呂浴びることにする。部屋の風呂もお湯が張られているが、温泉地に来たからにはやはり大浴場とそれに続く露天風呂で長時間運転の疲れを癒したい。大浴場は一度ロビーに出て南東に長い廊下を行った所に在る。館内は浴衣・スリッパでOK。大浴場の履物棚に山靴が一足ある。どうやら宿泊客だけではなく、山歩きや釣り客にも利用できるようになっているらしい。脱衣所で入れ違いになった人が居たが多分そんな客なのだろう。大浴場にも露天風呂にも私以外は誰も居なかった。オフシーズンにこういうところを利用するメリットを満喫する。
風呂の外には休憩コーナーがあり自動販売機が備えられ缶ビールもあるがここはグッと我慢する。今飲むと食事までの時間うたた寝してしまう恐れもあるし、食事時のビールの旨さを堪能できない。やはりジョッキで生といきたい。
別館へ戻る廊下は静かで、どうも泊り客は我々だけのようだ。突き当り一つ手前が自室だが一番奥まで行ってみて驚いた。“天皇の間”とあるではないか!翌朝調べてみると、昭和天皇、今上天皇それに現皇太子ご夫妻もここにお泊りになっていたのだ。我々の部屋には侍従の方でも宿泊されたのだろうか?畏れ多いことである。
(写真はクリックすると拡大します)
(次回;八幡平ハイツ;つづく)
0 件のコメント:
コメントを投稿