4.1989年経営トピックス-4;社外活動
大学時代研究室に入ると皆計測制御学会の学生会員になるよう指導された。会社に入ってからもそれは継続していたが、そのお蔭もあって1970年学会誌に横河電機のTMTさんと和歌山工場における潤滑油プラントのコンピュータコントロールに関する報告を掲載する機会を得た。その後係長・課長職になると社命でいくつかの学会活動に関わるようになる。学術振興会第143委員会(プロセス制御)、化学工学会プラントオペレーション研究会、同学会経営システム研究会、OR学会、経営情報システム学会などの活動に法人会員あるいは個人会員として参加した。
このような学会活動を中心とした社外活動の最大のメリットは、社外の専門家との交流を通じて、自社そして自分の力量を客観的に評価でき、取り組むべき課題が見えてくるところにある。東燃はExxonとの技術提携契約もありこのような活動にやや積極性を欠き、あまり評判は良くなかったのだが、SPINはこの契約外の会社として設立されたので、割と自由に振る舞える環境にあった。もともと学会活動は好きだったし、役員になって2年目、経営の勝手も分かってきたのでこのような仕事にも目を向けられる余裕が出来てきた。
常勤役員4人の内3人は事務系出身、業界団体(情報サービス産業協会やコンピュータユーザー関連)はそちらに任せ、技術分野は専ら私の専管事項となった。古くからメンバーだった化学工学会やOR学会の役員を務めるとともに、各種研究会での活動に力を注ぐようになっていく。
当初の目的は専門職としての研鑽を専らとしていたのだが、学会や業界を代表する人達との付き合いは、会社や製品・サービスの売込み、業界情報の収集、はたまた求人活動にまでつながり、経営にボディーブローとして効いてくることになる。更に後年これらの活動が海外のプラント関連ソフトウェア導入に大きく寄与することになる。生産管理のMIMI(米)、リアルタイムプラントデータ処理のPI(パイ;米)、最適組合せ問題を解くILOGソルバー(仏)、物質や熱量のバランス計算を数理的に調和させるΣファイン(英)、石油精製生産スケジューリングソフトORION(オライオン;米)などの国内販売独占権を得られたのは、源を辿れば化学工学会やOR学会での活動と深く関わってくるのである。これ以外にも結局当社では取り扱わなかった企業・製品とのコンタクトもこの線につながるものが多かった。
そしてもう一つ、上記学会が東燃時代からの継続であるのに対して、経営情報システムに関する興味から新しく取り組んだのが、富士通の大型機ユーザーで構成するラージシステム研究会(通称LS研)の“情報システム戦略度診断”分科会活動である。LS研は歴史のある組織で、沢山の分科会が在り、1983年東燃が富士通の汎用機を導入して以来、多くの若手・中堅メンバーが参加していた。この年も例年同様何人かが参加を希望していたが、一つのテーマに“戦略度”とあったことから、強く惹かれた。と言うのは1980年代半ばから製造業ではCIM(Computer Integrated Manufacturing;コンピュータによる統合生産システム)なる言葉が流行り始め、丁度東燃が進めていたTCSもその一つの事例として紹介する機会がたびたびあり、情報技術の“戦略的利用”に関して問題意識を日頃感じていたからである。更にもう一つ、やはり同じような時期SIS(Strategic Information System;戦略的情報システム)なる略語が飛び交うようになり、東大経済学部の土屋守章教授(故人)などが学術面から、経営と情報システムの在り方について研究を始めており、そのインタビューを受けたこともあり、この分科会に興味を持ったのである。
(次回;1989年経営トピックス;LS研分科会)
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