7.セビーリャ-2
セビーリャ大聖堂に隣接する塔は“ヒラルダ(風見鶏の意)の塔”と呼ばれ、12世紀のイスラム時代はミナレット(礼拝時刻を告げるための塔)として造られ、それを活用している。高さは約100m、内部は階段ではなくらせん状のスロープになっている。塔頂まで上がるとセビーリャの旧市街が一望できる。ただ全体がイスラム時代のものではなく、上部は地震で崩壊したためゴシック様式に改められているので装飾が異なる。こんなことはスペインだからこその歴史の名残と言える。
聖堂内に入ると、思ったほどの大きさを感じない。それは中央部に聖歌隊席で囲われた巨大な祭壇があるからだ。この祭壇の南側に4人に担がれたコロンブスの棺がある。最新の電子技術を駆使した調査では確かに人骨の一部が認められたそうである。壁面や天井に描かれているのは聖書の一場面をモチーフにしたもの。カトリック美術は何か稚拙で毒々しい感じがしてどうも好きになれない。
聖堂見学を終えると近くのアル・カサル(城砦)に徒歩で向かう。ここも本来イスラムの王宮として建てられたものだが、その後キリスト教徒の後継者たちが増改築、前日訪れたアルハンブラ宮殿を模し部分もあると聞かされ、一部を城門前から観るだけで終わる。日差しはさらに強くなり、暑さも一段と高まってきた感じだ。
城壁に沿って北東へしばらく行くとサンタ・クルス街、ここは旧ユダヤ人居住区。今は小ホテル、レストラン、土産物屋、バルなどが軒を連ね、観光客で賑わっている。もしセビーリャ市街に泊まるなら夜来てみたい気がするような街だ。ここを抜けて西に向き転じると城壁と大通りに挟まれた南北に細長い公園に出る。その中ほどにはコロンブスの記念碑があり、この近くでやっとクーラーの効いたバスに戻る。
次に向かうのはここから南へ1kmほどの所に在るスペイン広場。1929年の万博会場を公園化したところである。歴史的にそれほど由緒のあるところではないが、個人的にはセビーリャで一番出かけてみたい場所である。理由はディヴィッド・リーン監督・ピーター・オトール主演の名画「アラビアのローレンス」に登場したからである。封切りで観て以来すっかり惹かれ、TV放映、名画祭と機会があれば出かけており、昨年も数々の名作を再演する「午前十時の映画祭」で堪能した。しかし、何故スペインのセビーリャが関係するのか?カイロに在る英軍司令部としてロケハンされたのである。軍服を着た将校たちが行き交う列柱の並ぶ回廊をアラビア装束のローレンスが進んで行くと周辺から好奇の目が射すようにローレンスに注がれる。極めて印象的なシーンである。この旅行を始めるまで、その建物はカイロに在るものと信じ切っていたのだが、準備中にそれを知り、必見の観光スポットに転じていた。
実際の建物は広場に向けて半円形。回廊に沿って水路が巡らされ、ボートで遊覧できるようになっている。ガイドの説明が終わるのがこの時ほど待ち遠しかったことなない。終わるや否や広場の中心点に向かい全体を眺める。今度は建物の正面に向って進み、階段を上って回廊を歩いてみる。強い西日はまるでカイロ軍司令部を再現しているような気分に浸れる。期待していた以上の雰囲気を堪能。こうしてセビーリャ観光の一日が終わった。
(写真はクリックすると拡大します)
(次回;カルモナ)
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