2016年4月17日日曜日

九州遠征超長距離ドライブ(7)


5.足立美術館
山陰ドライブで唯一時間をとる観光スポットとして選んだのは足立美術館(1970年開館)。境港、松江、出雲大社、萩、長門海岸など興味のある場所は多々あるが、出かけたことのある数人の友人・知人が揃って薦めるのがここだったからである。距離と時間を考えても、早い夕刻に門司港にたどり着くために適当な立ち寄り地点だった。山陰地方の海沿いの自動車道は出雲で終点、あとは一般道になるので、景観を楽しむには中国道よりいいのだが、所要時間に難点があるのだ。
ここの見所は、庭園(5万坪)、日本画、陶芸と言うことになるようだ。中でも誰もが絶賛するのが庭園である。米国のガーデニング誌評価でも例年日本庭園ではトップで、2015年度も2位の桂離宮を抑えてその座に在る。絵画は童画を除けばすべて日本画、横山大観は特別展示室が在り、120点近く保有するものの一部が展示されている。大観の他には川合玉堂。上村松園、川端竜子、富岡鉄舟など錚々たる顔ぶれの作品が揃っている。陶芸では、河合寛治郎、北大路魯山人二人の特別展示室が設けられている。
前回の写真で紹介した、遠方から見えた白亜の目立つ建物に“足立美術館”とあったので、これがそれだと思ったがとても庭を愛でるような構造に見えないし、だいたい評判のわりにまるで味気ないデザインだ。直ぐわかるのだが、これも美術館の一部に違いないのだが、新館で新人の作品などを展示するスペースやアートシアターになっているようだ(この他に建物の高さから考えて、23階は作品保存庫にでもなっているのではなかろうか)。
本館はこの奥の道路を隔てたところに正面玄関がある。フロントロビーを過ぎるとクランク型の回廊があり、途中からガラス壁越しに庭園が現れる。ひと曲がりすると別の小庭園、このあたりの演出は見事だ。回廊が終わると再び広々としたロービー、一枚ガラスの向こうに展開する手入れの行き届いた日本庭園が一望だ。ここには縁台のような長椅子がいくつか据えられており、ゆっくりそれを愛でながら過ごすことが出来る。
そこを過ぎるといよいよ作品展示室である。最初の部屋に意表を突かれる。童画である。幼い頃何冊か持っていた“キンダーブック”などに描かれていたものが目の前に在るのだ。林義雄、鈴木寿雄、そして武井武雄などである。ただなぜ童画がここにあるのかは分からなかった(林義雄の作品は没後ここへ寄贈されたらしいが)。
現役時代海外出張をした際、時間が空くとよく美術館や博物館に出かけた。特に米国の有名どころはほとんど訪れている。ヨーロッパもツアーに参加すると観光コースに必ず組み込まれているので、訪問国の著名な美術館はあちこち観ている。国内ではデパートなどで開催される展示会をぶらっとする程度だが(有名絵画展は人を見に行くようで避けている)、絵を観るのは楽しみである。しかし、観るのは専ら洋画、嫌いなわけではないが、版画を除けば、日本画を金を払ってわざわざ観に出かけたことは無い。従って、ここを訪れて初めて日本画にも随分幅があることを学ぶことになった。
部屋が変わる一角には明かり採りのように見えるガラス窓があり。そこから額縁や掛け軸のように庭の景色が切り取られる。1階から2階に移る角に茶室が在り、ここの一角だけはガラス越しでなく、直に庭と接することが出来、何故かホッとする。
率直な感想を言えば庭も展示物も“見せるために凝り過ぎている”。「どうだっ!」と言われている感じを拭えなかった。持たざる者の僻目であろうか?

創設者;足立全康(ぜんこう;18991990)は地元農家出身、商才が長け大阪における不動産業で財を成した人。

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(次回;九州へ)

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