2017年1月21日土曜日

台湾一周鉄道旅行-11


9.嘉義の夜
嘉義のホテルは「駅にも繁華街にも近く、日本人団体客の利用しないところ」とJTBに頼んで決めた。しかし、阿里山森林鉄道に乗る前荷物を預けるために立ち寄ったところ、駅まで徒歩だと20分くらいかかると言われた。確かに、歩けない距離ではないが、荷物を持ったり不案内なことを考えると“駅に近い”とは言えない場所に在った。台湾名は“兆品酒店”ローマ字表記では“Maison de Chine Hotel”とある。飯店や賓館がホテルを表すことは知っていたが“酒店”は初めてなので、ヨーロッパ(名前もフランス風)に多いレストランでも兼ねた小さいホテルを想像したが、高層の普通のホテルであった。フロント担当者の何人かは日本語を話すので何ら不自由を感じない。部屋は6階でつくりは簡素、クローゼットはなく、衣類は壁のハンガーにぶら下げるだけだが、日本のビジネスホテルよりははるかに広く、清潔感やセキュリティにも問題ない。
雨のちらつく夕方のチェックイン、早々に荷物の整理をして6時前にフロントに下りて夕食の相談にのってもらう。「土地の名物料理をカジュアルな店で摂りたいんだが・・・」用意されたのは2種類の地図。一つは(何故か)“神木”と題されたホテルのパンフレット、駅を含めた嘉義中心部をカバーし地図上には10を超す番号がふってある。全部食べ物を扱う店のようだ。もう一つはA5程度の紙片に“嘉義~小吃美食地図”と題した、ホテル周辺の食べ物屋を記したものである。残念ながら日本語表記はないので漢字から類推するしかない。
先ず夜市のことを聞いてみた。「近くにあります。しかし始まるのは夜の10時半からです」「終わるのが?」「いいえ、始まるのが10時半、終わりは朝の4時頃です」「平日も?」「そうです」「うーん(一体全体ここの人はどんな生活を送っているんだろう?)」で夜市はなし。
「海鮮料理は?」「お薦めの店があります」と“小吃地図”で示してくれる。店の名前は“林聰明砂鍋魚頭”(Fish)とある。「(どこかで見たな)」とガイドブックを当たってみると砂が沙と変わっているが同じ店らしい。“地元の人に人気”、“名物スープは直ぐ売切れになる”などと書いてある。「よしここにしよう!」と決めて「予約できる?」と問うと「ここは予約できません」との返事。「日本語OK?」と聞くと「大丈夫」と言う。
早速“小吃地図”で道順を確かめる。しかし、この地図が問題だった。「ホテルの前の通りをまっすぐ行くとロータリー(中央噴水池)になっています。その一つ先の道を左に行くと看板が見えます」といとも簡単にたどり着けそうな説明。ロータリーまでは迷わず行けたが、その周辺の道路はこの地図ほど簡単ではなかった。微妙に曲がったり、ロータリーから放射状に走る道もある。ロータリー周辺を右往左往した挙句、もう店の商品も大方片付いて客もいないケーキ屋に飛び込んで、地図を示して案内を乞うた。店番をしていたおばさんは日本語も英語もダメ。奥から若い女性が出てきて「日本の方ですか?」とおばさんから引き取り「この地図は少し変。ここからではチョッと分かりにくいから私が案内してあげます」とあまり流暢ではないが日本語で対応してくれる。道々聞けば数年前インターシップで鳥取県大山のホテルで数か月、日本語研修もかねて働いたことがある人だった。日本語会話が上手く通じないとき英語で問い直すとそちらの方が分かりやすかった。
店に着いて驚いた。まるで市場のオープン食堂、道路までテーブルが並べられ、客が受付係の前に並んでいる。大きな声が飛び交い、店員が走り回っている。注文はメニューを印刷した紙に数量を書き込んで店員に渡すのだ。案内してくれた女性が漢字のメニューを説明してくれる。名物のスープと鶏肉ご飯の欄に2を記入して、店員に渡して「楽しい旅を!」と言って去っていった。もし彼女がいなければ注文できたかどうか。多謝である。
出てきた料理は、魚の頭・身、豆腐、白菜、きくらげなどを煮込んだもので、(ガイドブックによれば)扁魚(これがどんな魚だかよくわからない)を干したものが出汁として使われているらしい。美味しいがボリュームが多く完全に平らげことが出来なかった(スープは二人一つで充分)。店を去るとき見ていると、スープだけを透明のポリ袋に入れて持ち帰る人も結構いる。この夜の会計は台湾ビール1瓶いれて400元弱。台湾のホスピタリティーを満喫した夜だった。

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(次回:高雄へ)

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