8.阿里山森林鉄道-2
前々回の“新幹線で嘉義へ”で紹介したように、この一帯は広々とした畑地が広がる。おそらく、台湾で最も広大な平野ではなかろうか。1931年(昭和6年)ここに在る嘉義農林学校(旧制中学校相当)が甲子園に初出場ながら、準優勝したことは球史に残る出来事だし、台湾の人々はそれを誇りに思っており、近年“KANO”と言う映画が当地で大ヒットした。数少なかったこの農業専門実業学校は現在は国立大学にまで昇格している。
そんな大農業地帯を起点とする“森林鉄道”ゆえ、しばらくは平地の街中を、町工場やコンビニなどが在る道路に沿って北東に進路を向けて走る。踏切がやたら多い(必ず警笛を鳴らす)。チョッと昔の玉電や池上線に乗っているような感じで、まるで旅という風情はない。それでもやがて家並が途切れ、農地にバナナや高いヤシの木のようなものが現れる(いずれも実はなっていいない)。保線状態か車両そのものかとにかく揺れやがたつきが気になる。40分位走ったところで竹崎駅に着く(事前アナウンスに日本語あり;英語はなし)。まだここまではほとんど高低差が無い。構内に側線が多く、朽ち果てたような列車や貨物車両、タンク車(アスファルト用?)も並んでいる。
しかし駅を出るとやや上り勾配になり、カーブも多く周辺も雑木林のように変じ。そんな中に青い覆いをかぶせたバナナがちらほら見える。収穫はこれからなのだろう。近く遠くに相変わらず長い幹を一直線に伸ばし天辺だけにヤシの葉のようなものが生えた木が見えるので、気になって仕方がない。車窓近くのものを観察するとまるで竹の節のようなつくりの幹だ。あとで調べて分かったのだがビンロウ樹であった。勾配はさらに急になり谷が深くなっていく。トンネルを何カ所かでくぐり10時10分頃樟脳寮駅に到着。
いよいよここから3重スパイラルループが始まる。しかし、残念なことに両側とも藪が間近に迫り、見通しの効くところは限られていて、とても写真を撮ることは出来ない(私のデジカメはシャッターがおりるのが遅い!)。実感するのは「アレ?さっきと同じ山並みがまた現れた!」と言う程度である。
ループの中ほどにある獨立山駅周辺には珍しくカメラを持った観光客が数名居り、我々の列車を写真に収めている。クルマでここまでやってきたようだ。ループを抜けると一面竹林(孟宗竹のようだ)、高度によって植生が変わってくるのがよく分かる。植物に興味がある人は、これが面白くてこの鉄道に乗るらしいのだが、こちらは専ら“3重スパイラルループ”(初めての経験は中学2年生のとき通った清水トンネルのループ。あの時も列車からループをはっきり見ることは出来なかった)。その期待は完全に裏切られてしまった。「クルマで来て外から観察する方が面白いのかも?」と思ってしまった。
11時過ぎ水社寮駅。駅周辺に小集落があり、線路に沿う保線路に保線員が現れる。山側ががけ崩れを起こしており、それの復旧工事をしているようだ。土砂防止のトンネルも何カ所か見かける。一時暗かった空が明るくなり雲が下になってまるで墨絵を見るようだ。
11時20分列車は定刻通り終着駅奮起湖(海抜1403m)に着いた。プラットフォームには大勢の観光客がカメラを持って待ち構えている。ここまでの鉄道便は今乗ってきた1本のみ。彼らは一体どうやってここに来たのだろう?前日?クルマかバス?
(写真はクリックすると拡大します)
(次回:阿里山森林鉄道;つづく)
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