2017年5月15日月曜日

決断科学ノート;情報サービス会社(SPIN)経営(第3部;社長としての9年)-12


8SPINの将来を考える
東燃の経営陣刷新による本業回帰策は、新事業開発の中止・整理、工場生産効率の改善やオフィスの移転ばかりではなかった。それよりはるか以前、第2次石油危機以来始まっていた早期退職優遇制度の一層の推進があった。“優遇(積み増し)”の内容は一段と高まり、その退職金の運用や再就職斡旋も会社が保証してくれるのである。40歳代後半から50歳代半ばの社員が続々と会社を去っていった。次に来るのは子会社のリストラ、そんな予感がひしひしと感じられた。
もともとSPINの設立時からE/Mはその存在意義に疑問をぶつけてきており、スタート後も年々チェックが厳しくなってきていた。ポイントは東燃グループ関連売上と利益に何かからくり(新規事業投資の隠れ蓑)がないかと言う点である。初めは収支だけであったチェックポイントは次第に第3者との価格競争力を問うようになっていった(競争購買)。ある時には日本法人のエッソ石油のプロジェクトに応札する誘いまでかけて、我々の手の内(内外サービス原価格差)を調べることまでしてきた。これは愉快なことではなかったが、自らの身を質すために大変役立つことだったし、E/Mの経営方針がストレートに伝わることで、自社の将来を考える上での心構えを醸成する機会を早めに与えてくれるという利点もあった。
グループのオフィスが恵比寿に統合されたのが1997年の5月。それからしばらくした7月チェンジプロジェクトチームの3人、サブチームリーダーのIWSさん、社長室からこのチームに加わったSNTさん、これも経理から選ばれたKNZさん、が「折り入って話がしたい」と私に単独面談を求めてきた。いよいよ来るものがきたのだ。何社かある子会社の見直し・リストラである。石油化学(TCC)は兄弟会社と言いていい規模なので別扱い。東燃タンカー(TTK)はエネルギ行政と海運行政の違いから必須の会社。東燃テクノロジー(TTEC)はエクソンエンジニアリングの出先機関であり社員はすべて東燃からの出向者。この2社は本業と一体なので存在を問われることはない。東燃不動産も所帯が小さくどうにでもなる。当面の対象はグループ向け人材派遣や総務関連サービスを提供する東燃総合サービスとSPIN、中でもプロパー社員数の突出しているSPINが大きな課題とのこと。
TMB社長やNo.2FJM常務は同じ東燃グループ、何とかグル-プ内に残したいとの意向ですが、今までのE/Mとの交渉過程では難しいと感じます」と切り出される。E/Mの本業回帰・強化戦略の視点から「創設時の構想でいずれ株式を公開することを目標にしていた」「それを忠実に追うようにSPINビジネスは売上ベースで、コンピュータ運用サービスを除けばグループ外ビジネスが年々高まっている」「これは本業には不要、そこから遠ざかる何よりの証ではないか」と見られていると言うのである。反論のしようがない見事な論理である。「この環境を踏まえ、SPINをどうするか早急に考え方をまとめてほしい。また、東燃グループから切り離されることに対する希望・条件を提示してほしい」と告げられる。どんな選択肢が考えられるだろう?これがSPIN生き残り策検討の始まりである。


(次回;SPINの将来を考える;つづく)

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