2017年11月26日日曜日

磐梯・会津紅葉ドライブ-9


8.諸橋近代美術館
白布峠越えはドライブの楽しみと言う点で今回最大の目玉だった。ただ5年前に一度往き帰りと走っていたことで、何とか諦めることが出来た。実は、昨晩から気がかりになっていたこともそれを後押しした。峠越えをし、米沢の歴史スポットを巡り、さらに磐梯吾妻スカイラインを廻ると、美術館をゆっくり鑑賞する時間が確保できるだろうか?さらに、家内が「五色沼散策コースを端から端まで歩いてみたい」と言い出していたのだがこれをどう実現するか?三日目は最終日、会津若松観光と大内宿・塔のへつりと決めていたので、どこかを端折る必要があると悩んでいたのである。しかし、幸か不幸か、白布峠も磐梯吾妻スカイラインもダメと言うことで、一気にこの悩みは解決した。これから(10時過ぎ)諸橋近代美術館を観た後、昼食を五色沼の東端に在るビジターセンター近くで摂り、そこから散策路の西の外れまで歩き、路線バスでビジターセンターに戻ることで、最終日の予定を崩すことなく、ほぼ計画通り過ごすことが出来るのだ。
旅先でチョッとした郷土歴史館や物産館のような施設に立ち寄ることはしばしばあるのだが、本格的な美術館や博物館を訪れたのは、昨年春九州まで単独行をした時安来市の足立美術館で数々の日本画を接したこと以外皆無だった。滞在型の新しいドライブ旅行の始まりとして何か面白い案はないか、と名所旧跡を探っていた際見つけたのがこの諸橋近代美術館である。会津若松辺りの資産家が道楽で集めたそれなりの絵を展示しているところだろかとさらに調べてみると、そこが世界でも有数のスペイン画家ダリに特化した美術館であることが分かった。ダリの名前と作品を知ったのは、多分中学校の美術の教科書だったように思う。あの“柔らかい時計”である。「どうしてこんな発想が沸いてくるんだろう?」と強烈な印象が残った。爾来、スペイン旅行はしたものの、ダリの作品に触れる機会はなかったので、ホテルから近いことを知って、今回是非その作品群を間近に目にしたいと思った。
2車線の国道459号を南から北に上っていくと美術館へ右折する専用レ-ンが現れる。それほどここへやってくる車が多いからだろう。芝生、紅葉、広い池、その向こうに在るユニークな形の城のような洋館、駐車場は入り口近くと西側の小高い丘の上の二カ所に在る。広い丘の方の駐車場に止めて本館に向かう。平日の開館直後(9時半)と言うこともあり、吹き抜けの広いロビーは閑散としている。ここで入場料(950円)を払い、無料の音声ガイドを借りて各部屋を廻る。
建物は東西に長く、北側は窓のない部屋が四つつながり、絵画の展示場だ。南側は天井の高い大広間で、大小さまざまな彫刻が置かれている。保有作品(絵画、版画、彫刻)の数は約330点(この他にシュールレアリズム作家の作品が約60点)、これは米ダリ美術館(フロリダ)、スペイン・フィゲラス美術館(バルセロナ近郊)に次ぐ規模とガイドブックに書かれている。当然、全作品を展示できるわけはなく、適宜入れ替えが行われる。我々がここを訪れた時は、4室の内2室は挿絵・版画展に使われており、「カルメン」と「トン・キホーテ」をテーマとした版画が40点ほど、「ダンテの『神曲』」を題材にしたものが約30点であった。他の2室は油絵やリトグラフで戦後の作品が多く、構図や色調が少年時代に脳裏に刻まれた“柔らかい時計”に通ずる雰囲気を醸し出していた。
大広間の彫刻は約30点、ほとんどがブロンズ製、絵画に劣らずユニークなもので、題名との関係をしばし考え込んでしまう。この謎解きもダリ鑑賞の一部かも知れない。理性を離れ潜在意識の中に在る夢や幻想を表現と言うシュールレアリズムが、この歳になると何となく理解できる。日ごろあまり考えない世界に浸れた時間は思わぬ拾いものであった。
なお、この美術館作った諸橋廷蔵氏は福島県郡山市出身で東証一部上場のセビオ株式会社(スポーツ用品小売業)の創業者、2003年に没している。

(写真はクリックすると拡大します)


(次回:五色沼を歩く)

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