2018年8月5日日曜日

ドイツ周遊3000km-21



-バス、鉄道、船、乗り物三昧の9日間-

1.ニュルンベルク.
525日(金)早朝は我が家付近では先ずお目にかかることが無いような朝霧だったが、745分の出発時には明るい陽射しになっていた。昨夕の雨の中の田舎道とは異なり、アウトバーンに達するまで大型バスの走りに問題のないごく普通の道路をゆく。昨日は道を間違えたに違いない。道沿いにガソリンスタンドがありハイオクはリッター1.60€(208円)、日本より50円も高い。周辺は相変わらず緩い起伏の緑野が続き、大規模な太陽光発電や風力発電設備が散見される。そんな長閑な田園地帯をA72号線、A9号線とアウトバーンを乗り継いでバスは南西に在るニュルンベルクを目指す。1時間半くらい行ったところでBayreuth(バイロイト)の標識が現れる。音楽祭で知られた町だが、道は町の外れをかすめるように通過するので、工場が点在する産業都市の印象しか残らない。
10時半ころA9を下りて市内へ向かう。よく整備され緑の多い郊外の道の左右に工場や物流センターのような施設が現れ、やがて路面電車も走る市街に入っていく。バイエルン州ではミュンヘンに次ぐ大きさのニュルンベルクの町である(人口50万人)。バスは市内では止まらず、北の丘に建つ神聖ローマ帝国ハインリヒ3世の居城ガイザーブルク城で我々を降ろす。実はこの城のことはここへ来るまで知らなかった。興味は、ナチス政権樹立直後の1933年から1938年までナチス党大会が開催され、第1回大会の模様は、女流監督レニ・リーフェンシュタールのドキュメンタリーとして今でもTVなどで部分的に放映されている。広大な広場を埋め尽くす独特のヘルメットをかぶった親衛隊員を高いところからヒトラーが睥睨するシーンはこの町で撮られたものなのだ(今はそれをとどめるドキュメントセンターが在る)。もう一つの関心事は、第2次世界大戦終結後に開かれたニュルンベルク戦争裁判(これは裁判所が現存)である。しかし、大会会場・裁判所とも郊外西方に在り地下鉄を利用しなければ行けない場所、当然ツアーには含まれていなかった。
ヒトラーがここを大会開催地に選んだのは“最もドイツらしい町”と言うことが理由らしいのだが、連合国側からは“ナチスの聖地”と見られ、徹底的な空爆で町は破壊、さらに米軍との地上戦による砲撃もあり壊滅したのだが、例によって、ドイツ人の復旧に賭ける情熱・執念はひとかたならず、完全に元の姿に戻っているとのこと。
丘の中腹にあるカイザーブルク城は石造りの城壁や塔ばかりでなく、木組みが壁面にあらわれた当時の住居棟まで丁寧に復元されている。そこから街を見下ろすとオレンジ色の瓦の海、中世の世界がそのままそこに在る。城から少し急な坂を下って町の中心部向かいうと、マルクト(市場)広場を囲むように聖母教会、市役所などが、これもとても最近のものとは思えないような、年季の入った姿を再現している。町の中心部を東西に貫くベグニッツ川には川中島が在り、そこにも古い建物が美しいたたずまいを見せている。これらすべてを、瓦礫の中から元の状態に戻すのに、どれほどの労力・資金・時間を要したのだろうか?こんなことを他の民族・国家は出来ただろうか?歴史的に小領邦国家分裂時代が長く、それもあり地方自治の独立性が高いことと関係があるのだろうか?ドイツに来て一番考えさせられたのはこのことである。
城からマルクト広場に出たのが11時半頃、ここで125分まで自由行動となる。理由は聖母教会の正面上部に組み込まれた仕掛け時計が12時になると動き出すからだ。まるで真夏のような強い陽の照るなか、沢山露店が出て今がシーズンの白アスパラガスが並べてあった。美味しそうだが生ものを買うわけにはいかない、
広場を離れて少し周辺を歩いてみた。とても50万都市とはおもえないコンパクトな作り、近代的な建物は皆無だ。だからといって日本の復元宿場などのように飲食店と土産物屋ばかりでもない(多いことはあるが)。それなりに生活感があるのが良い。12時少し前に広場に戻り、運良く日陰のベンチに席を確保、仕掛け時計の動くのを待った。高い所で二人の人形が何やら動作をしたが、動きが少なく、期待したほどのものではなかった。
昼食は、この町を舞台にした楽劇(ドイツオペラ)にワグナーの「ニュルンベルクのマイスタージンガー」のモデルになった人物(靴職人)の銅像がある広場の近く、聖母教会の裏手にあたり、川の中州まで跨いで達する大きな石積みの建物の中にあるレストラン“Heilig Geist SpitalHoly Ghost Hospital;聖霊病院)”と言う妙な名前の所だった。帰りにもらったドイツ語のパンフレットから推察するに1339年創設(多分病院)!とある。この建物は、聖母教会に付属する、貧民向け医療施設で下部(レストラン部分)は養老院だったようだ。当に我々グループにピッタリ!雰囲気は悪くなかったが、食べたのはスペアリブとジャガイモ、格別の味ではなく、ビールで流し込んだ。


写真上から;ニュルンベルクへのアプローチ、カイザーブルク城(部分)、城から見た街並み、美しの泉(広場の一角に在る19mの尖塔)、広場の露店、川中島、レストラン「聖霊病院」のパンフレット。

(写真はクリックすると拡大します)

(次回;ドナウ川遡行)(メールIDhmadono@nifty.com
  

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