-バス、鉄道、船、乗り物三昧の9日間-
16.ドナウ川遡行
1時半ニュルンベルクを出発、行先はケールハイム(Kelheim)と言うドナウ川上流域の町だ。市内を出てまだアウトバーンに達する前から空模様が怪しくなってくる。南東に向かうA3に乗るとそれが本格化して雨中走行となる。古都レーゲンスブルクの少し手前でA3を降り、一般道を南下してケールハイムの町はずれに在る船着き場(Schifffart)に3時20分到着。小降りだが雨はまだ降っている。周辺はライン河の時のように町が開けているわけではなく、はるか先の小高い丘の頂上に東西ドイツ統合記念の建物が認められるほかは緑に覆われている。ここを出発して約50分程河を遡りウェルテンブルグ(Weltenburg)まで航海する。バスは荷物を積んで下船地へ陸路で廻る。
ドナウ河を初めて見たのは2005年クリスマス直前、仕事でハンガリーの首都ブダペストの北西、スロバキアとの国境近くに在る製油所を訪れた時である。寒さもあってとても“美しき碧きドナウ”と言う印象はなかった。今回も小雨の曇天。水の色は薄茶色で第一印象は前回と変わるところはなかった。船はライン河クルーズに比べればかなり小ぶりだ。雨はほとんど上がっているが、屋根だけの上甲板船べりのベンチはびしょぬれで座れない。幸い乗船者が少ないので比較的中央の席からでも後方周辺の景観が邪魔されることなく見渡せるので最後部に席をとる。出帆は3時45分。
ドナウはヨーロッパ第2の大河(第1はヴォルガ、第3がライン)で、ブダペストで観た時は川幅もかなりあったが、ここら辺は水量は多いものの幅はそれほどでもなく、Durchbruch(Gorge;切通し、渓谷)と称しているが、日本の代表的な渓谷(瀞峡、天竜峡など)の方がよっぽど幅も広く山が迫っている。それでも白い崖が船が回頭するたびに現れ、天候が回復するにつれその白色が映え、ラインに比べ確かに渓谷美はこちらの方がはるかに優れている。こんな狭い河でも国際河川(11ヶ国)、行き交う船は国旗を掲げている。空は雲が切れ青空が見え陽が差すようになってくると、周囲の緑が水に映り、やっと“碧きドナウ”が顔を見せてくれる。先の方に広い砂州のような所が見えてくるともう終点のウェルテンブルグだ。砂州と見えたのは石の河原、湾曲部のために小石が無数に広がっている。下船後皆で水切り遊びをしばし楽しんだ。
ウェルテンブルグは小さな、そして隔離された僧院の町。特製ビールがあるのだが、ゆっくり飲む時間は無い。と言うのはそこからバスの駐車場までかなりの距離があり、歩かなければならないからである。17時15分駐車場を発ち、今日の宿泊地ミュンヘン空港の北側の町、フライジング(Freising)に向かう。A93→A9とアウトバーを辿れば時間は短いのだが、運転手も退屈なドライブに飽きたようで「時間もあるので下道を行きます」と言う。私も同じ感だったから大歓迎。ビール用ホップ畑が左右に広がり、時にはゴルフ場が現れ、その間にごくありふれた普通の町や村の中を通過する。こんな集落は他の国同様生活感はあるが、驚くような美観ではない。きっちり再現された町を見てきた後には何かホッとする。6時過ぎホテル・メルキュール・フライジングに到着。ツアー用ガイドブックには“エアーポートホテル”とあったので、てっきり空港に直結したホテルと思ったが、かなりその北側に離れて在り、滑走路がこちら側に向いてないのか、離着陸機が上空を行き交うことは全くない。ホテルもよくある巨大空港ホテルではなく、低層の中規模なものだった。ホテルの前は2車線の道路、その先に郊外電車が走り、駅も間近にある。空港へはこの鉄道を利用すればいいようだ。
我々の部屋は中庭に面した1階、静かで落ち着いており、アメニティは例によって、タオル・コップ・液体石鹸くらいしかなかったが、不満はなかった。
夕食はホテルのダイニングで。メニューは生ハムサラダ・鱈料理・ジャガイモ・生ビール、いつも同じような豚肉料理ではなかったから、まずまずといったところ。
ディナーの後添乗員のFSMさんから明日の一時離団について問われたが、ここまでのあまりに単調な風景の連続に、ドイツ博物館行きよりも、オーストリア国境に近い山岳地帯に在るノイシュバンシュタイン城(新白鳥城)を皆と一緒に観光すると答える。それにFSMさんも安堵した模様だった。
写真上から;ドナウ河クルーズパンフレット、乗船場、国旗を掲げて、白い渓谷、ウェルテンブルグ遠景、下船場
(写真はクリックすると拡大します)
(次回;新白鳥城)(メールID:hmadono@nifty.com)
0 件のコメント:
コメントを投稿