2018年9月8日土曜日

ドイツ周遊3000km-29



-バス、鉄道、船、乗り物三昧の9日間-

23.旅を振り返る(最終回)
528日(月)JL408便は予定通りフランクフルト空港を発ち翌29日(火)成田に到着した。ここでツアーは流れ解散、10日間のドイツ周遊旅行は終わった。じっくり見ておきたいと思っていた国の最後、海外旅行も何か大きな山を越した感がある。しかし一方で「本当にこの国の一端を知ったのだろうか?」と自問してみると、満たされぬものが多々浮かんでくる。個人的な関心事であった、ドイツ人の日常、第2次世界大戦や冷戦の名残り、科学技術の歴史と現状に、辛うじて表面だけ触れたに過ぎないとの思いが残る。ツアーに参加すると決めた段階で分かっていたこととは言え、期待と現実のギャップは大きい。それでも思わぬ収穫もあった。北部14を除きほぼ全土を駆け巡ることに因り、その国土を、主に地理的な角度から知り、「こういう地形なら」と大陸軍国たる必然性が、強力な装甲軍誕生も含めて理解できた。以下この国土の特徴から始めて、旅を振り返ってみる。

1)緑一面の草原・丘陵
英国やフランスも同様だが、日本から訪れると地形の穏やかさと緑一面の畑地や牧場の美しい遠景に圧倒される。しかし、この景色に慣れてくるとバスの運転手がいみじくも言ったように「アウトバーン走行は退屈なので下道を行きます」となる。ラインやドナウには急峻な岩場もあるが高さや大きさは驚くほどではない。スイス国境に近い新白鳥城辺りは確かに峩々たる山が迫ってくるが、極めて例外的だ。バスや列車に乗っていてトンネルをくぐることは先ずない。深い谷に架かる橋梁も記憶にない。地形がまったく日本と違う。山陽地下新幹線などと揶揄される、我が国交通インフラ建設コストとは大違いだろう。
2)領邦国家の歴史をとどめる都市
普仏戦争後統一されるまで、ドイツは多数の小領主国家に分かれていた。支配構造上位にはフランスやオーストリアが在ったから、一つにまとまりにくかった。それもあって地方に特色のある城塞都市が多く残っている。今では城壁の外まで広がっているものの、何か規制でもあるのだろう、(我が国のように)無秩序なスプロール現象は起きていない。中心部は古いものがよく保存されているが、ローテンブルクで泊ったホテルから類推すると、当然のことだが内部は近代化されている。
3)爆撃からの復元
ドレスデンはハンブルクと並んで空爆により壊滅的な破壊を被った。ベルリン、ニュルンベルクも同様だが、そこからの復元は容易なことではなかったと推察できる。破片の一辺まで回収して戦前の姿に戻した執念とエネルギーにはただただ感心させられた。
4)ホテル
今回のツアーで大都市の中心部に泊まったのはベルリンのみ。フランクフルト、ミュンヘンは郊外、あとはノイキルヘンの古城ホテルとローテンブルクの古い小ホテル。ベルリンは完全な大都市近代ホテルだが、後は比較的質素な中小ホテル。いずれにも共通するのは、客室内部は古さを感じさせないし、セキュリティや清潔感にも不満はなかった。ただいずれも、アメニティは最小限、環境負荷軽減に努めている。
ホテルに対する不満はツアー企画にある。大都市の中心部を明らかに避けている。コストなのか安全策なのか不明だが、自由時間に街に出られれば、少しはドイツ人の日常に触れられるのだが、それがまったく不可だった。
5)食事(朝食を除く)
機中食・車中食を除きランチ8回、ディナー7回を摂っているが、魚は2回(ヒラメ、鱈)、鶏が2回、あとは豚が大部分。ソーセージ、ザワークラウト、ジャガイモが記憶に残り、塩っ辛い味が今でも思い出すと口の中に滲み出てくる。美味しかったのは、自由行動で食したローテンブルクのイタリアンとハイデルベルクの白アスパラガスとシュニッツェル。北ヨーロッパ(英国を含む)の食べ物は今一つ好みではない。ただし、白ワイン、ビールは満足。
6)建築と芸術
数多くの教会、城塞を観たがやはりケルンの大聖堂には圧倒された。これが戦禍の中から再建されたのも凄い。もう一つ印象に残ったのはヴィース教会、カソリックには珍しく質素で明るい造りや内装が好ましかった。ゆっくり建築を楽しみたかったのはベルリン。特に統一後の新しい建造物が面白そうだが、バスで通り過ぎるだけで終わってしまった。
美術館は2ヵ所(ベルリン、ドレスデン)訪れたが、いずれもあまり宗教色が強くないのが良い。ベルリンでは音楽会にも出かけた。小規模な演奏会、聴衆はほとんど地元の人でこれも彼らの日常の一端に触れると言う意味で悪くなかった。
7)乗り物
3000kmのうち23はバス、残りは鉄道と船となる。四通八達するアウトバーンは見事なものだ。運転マナーも総じて良い。この交通インフラが自動車産業の基盤を支えているに違いない。乗用車はセダンが中心、ワゴンや軽自動車の我が国とは大違い。
ICEは日本の新幹線に相当するが、在来線部分も多くスピードはそれほどでもない。車両の造りも新幹線の方が良くできている(座席固定、トイレ洗面など)。ただ3列シートはないから、これだけはICEの方が快適だ。
8)科学技術
何と言っても心残りはミュンヘンのドイツ博物館(科学技術博物館)を見ることが出来なかったことだ。前日まで一時離団するかどうか迷ったが結局新白鳥城とヴィース教会を選んだ。ミュンヘンの町中に宿泊していたら見学時間を捻出出来たのではなかろうか。
最後に些細なトラブル(一応技術上の問題ととらえ)を報告しよう。最後に日ハイデルベルクの土産物店で自分用にヘンケルの爪切りを求めた。爪を切る部分が360°回転可能で、手の位置を変えずにどんな角度でも爪を切れるようになっている。最近握力が落ちてきていることもあり、足の爪を切るにもってこいだ。価格は12€、やや高いが驚くほどではない。ヘンケルだしアイデアにも惹かれて求めた。しかし、帰国後10回も使わないうちに、プラスティックの柄の部分が、バンと言う音ともに破断してしまった。「ドイツ一流メーカの製品もこんなものか!」と技術水準の低さを体験させられた(ヘンケルジャパンのHPには、包丁などの製品紹介と関連する料理教室の案内などはあるが、顧客サービスの窓口のようなものは無かった)。

と言うようなわけで、観光スポットを幅広く見学すると言う点では、天候にも恵まれ、まずまずの旅行だったが、何か隔靴掻痒の感が残る旅だった。加えて、デジカメが途中で壊れたのも痛恨事。最悪だったのが参加人数、31名は如何にも多い。これからはキャンセル料が発生する直前に人数を確認、20名を超すようだったら止めにしようと思う。

長い間本連載をご覧いただき、大変ありがとうございました。

写真は上から;ライン河下り、ケルン大聖堂、壊れた爪切り
(写真はクリックすると拡大します)

-完-

(メールIDhmadono@nifty.com

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