当初の予定では新宮近辺で観光する予定だったが、交通止めのロスタイムもあり、熊野川に沿う街道を三度目(最初はバス、二度目はコンテッサでこの年の春)の遡行に移る。前回(43年春)と大きな違いは無いが、さすがに晩秋、紅葉が美しい。夕暮れ迫る頃、狭い谷合に佇む湯の峯温泉に到着、7年前実習の帰途投宿した“あづまや”にチェックインした。どんな部屋に泊まったか、どんな夕食だったか、全く記憶していない。しかし、あの木造りの風呂場にただ一人、どっぷり浸かったことだけは鮮明に憶えている。すっかりこの風呂場が気に入ってしまった。
翌朝も晴天。この日のルートは初めて走る道である。湯の峯から中辺路を経て田辺に至る311号線。この道はいにしえから続く熊野古道と併走する。道は砂利で固めただけ、大部分は一車線しかない。片側は山、反対側は谷である。宿を出発してしばらくすると、向こうからバスがやってきた。退避場所までこちらがバックして行き交う。見ると国鉄バスだった。どこから来てどこまで行くのだろう?遍路の一つ、中辺路の出発点は紀伊田辺の港だから、多分出発点は紀伊田辺、終点は熊野本宮に違いない。SSSはその道を逆行していく。あのバス以来ほとんど行き交う車は無い。中辺路町はそれでも役場や学校などがあり、ガソリンスタンドまであった。町に入る手前で、明るい秋の西日に映える黄葉した大きな銀杏にハッとさせられた。この銀杏も紀伊半島を思い出すたび目に浮かぶ。しばらく下ると田辺への道になり、そこから42号線を初島に至る道は通い慣れたる道である。
次に紀伊半島を巡るドライブは今年の5月まで無かった。
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