2011年1月5日水曜日

黒部・飛騨を駆ける-6(高山-2)

 この日のドライブは高山から大町まで。北アルプス横断になるが、半日あれば充分な距離なので、午前中は高山観光に費やすことにしていた。ここでお土産も買いたい。予定の見所は、町中を流れる宮川の東に沿って開かれる朝市、その一筋東側に残された古い町並み、“さんまち(三之町)”、幕府直轄地の要、高山陣屋などだ。
 朝起きると天気は曇りだったが、朝食を摂り9時過ぎチェックアウトするため駐車場へ出ると小糠雨になっていた。町歩きにはちょっと残念な天候だが、幸い酷い降りにはなりそうにない。ホテルは観光スポットと少し離れているので、フロントの勧めてくれた、宮川の西側を走る商店街に近い、コイン駐車場に入れることにした。この時間、町の人たちが日常的に用を足す商店街はまだオープンしていないので駐車場に車は無かった。
 しかし、橋を渡って東側へ出ると、もう朝市には観光客や地元の人で賑わっている。川を背にして屋台や露店が連なり野菜・果物・漬物、土地の菓子などが並べられ、狭い道の反対側は土産物や食品などを商う商店が並んでいる。日本人に混じって西欧人やアジア人(多分中国人)も沢山見かける。前回紹介のレストラン「ル・ミディ」のシェフが野菜などを求めていたのを見かけたように、この朝市は観光客相手の見世物では決してない。地元の生活に密着したものなのが嬉しい。
 霧雨程度なので傘を畳んで、東西にこの町を貫く国道158号線でクランク型に宮川に沿って南へ延びる“さんまち”へ移動する。年季の入った材木の黒々した二階建てが並ぶこの通りは、昔のメインストリート。今では土産物屋や飲食店が目立つが、それでも産婦人科医院や工芸品の工房などもあって、ここにも生活のにおいがある。こんな雰囲気がヨーロッパの古い町並みと共通する歴史観を感じさせ、ゆっくり見て周りたい気分にさせてくれる。大勢の外国人を見かけるのは、この保存状態の良い町並みだからだろう。
 高山は匠の里、工芸品や和紙なども有名である。そんなこともあり、版画に関する店があるとガイドブックにあった。下手な横好きではあるが自分でも嗜み、美術で唯一少し解かる分野なので、そこを訪れることにしていた。しかし、なかなか見つからない。ボランティアの案内人に聞いたが、彼女も店の名前を知らなかった。それでも控えておいた住所のあるところまで同行してくれたが、既に閉鎖され看板も取り払われていた。残念至極である。
 この通りの南詰めまで歩き再び宮川を渡って西岸に出ると、そこに高山陣屋がある。一般に陣屋とは藩の役所だが、特に幕府直轄地代官の住居を兼ねたオフィスもこう呼ばれる。高山の陣屋は後者で、役所・郡代役宅・御蔵が敷地いっぱいに建てられている。特に年貢米を納める御蔵は400年の歴史を持ち、現存するこの種の蔵としてはわが国最古・最大とのことであった。大きな城と違い、ここにも往時の生活が偲ばれるのが良い。
 その後国道沿いにある、客はあまり入っていないが由緒がありそうな自家製の漬物を商う店に入った。名物“赤かぶ漬け”を求めるためだが、それがいく種類もあることをここで知らされた。やや酸っぱいのも、塩辛いもの、鰹の出汁で旨味をだしたもの、日持ちさせるため防腐剤の入ったもの、それが無いものなどである。種々味見をして鰹味の防腐剤なしを求めた。
 雨も上がった11時過ぎこの地を発ったが、文化の奥深さと幅(古いものばかりでなく)を感じさせる、そんな町に強く心惹かれるものがあった。
(次回;安房峠)
写真はクリックすると拡大します

0 件のコメント: