2011年3月25日金曜日

決断科学ノート-67(東北・関東大震災-6)

 工場に20年勤務し、今回の大震災・原発事故とは比ぶべくも無いが、何度か大きなトラブルや火災に遭遇した。可燃物・危険物を扱うことが言わばその使命である工場なので、日常業務の裏側には非常時業務のための組織やその運用手順が定められており、唯一その時のための組織といえる消防保安課を除けば、役割は日常業務と深く関係していた。
 例えば、消火班は装置の運転部門(当該装置担当以外の)、渉外・広報班は総務部門、救護班は福利厚生部門、私の組織(計測・制御・情報担当)は伝令班と言うような具合である。これらの非日常組織が、工場長を長とする防災組織として動くのだが、生産・出荷業務の緊急調整、装置の異常時特殊運転や設備の保守、資材の準備などは日常組織としての業務も多々あるので、班長(主として課長)は二つ(日常・非日常)の役割を担わなければならない。しかし、相互の役割が関係深いこともあって、仕事がダブルになる感覚は無く、割とスムーズに処理することが出来た。
 今回の震災・津波・原発事故複合災害における政府の動きを見ているとき、首相、官房長官を始めとする何人かの大臣が前面に出てくるのに比べ、省庁の次官・局長級はほとんど顔を見せない。明らかに政治主導を演出しようとする態度が見え見えである。しかし、現場で奮闘している自衛隊・消防・警察(これらは非常時業務が通常業務ともいえるが)・自治体職員などを見ていると、それぞれの専門部門(つまり省庁)が実際の仕事に精通し、非常時にも対応できる組織になっていることがよくわかる。
危機管理の法体系さえ理解していない(と思える)大臣がしゃしゃり出るよりは、優秀な官僚・専門家の方が遥かにクールな対処ができるに違いないし(総理が東電に乗り込んで怒鳴り散らすなど、ほとんど狂乱状態に等しい)、国民の信頼も得られる。
 政治家のやるべきことは、専門家に謙虚に学び、予算処置や仕事の優先度を決めたり、従来の省庁の縄張りを変えたり、(非常時の)法体系の解釈を臨機応変に扱うことに責任を持つことであろう(存在感だけPRして;蓮舫の節電担当、辻元のボランティア担当など、肝心の責任を自ら取ろうとする姿勢がまるで伝わってこない;海江田経産相、北沢防衛相)。
(本報をもって一先ず“大震災”関係は完といたします)

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