2012年5月30日水曜日

歴史街道を行く-吉野・高野・龍神を走る-(9)



9.吉野山の桜-2
中千本の公園付近で昼食を摂った後、徒歩で近鉄吉野駅方面へ向かう。とにかく中千本の中心地は旅館・土産物屋・食事どころが軒を連ね、この時間人で身動きも出来ないほどだ。上千本から下ってきたクルマもここで操車場の方に向かわされ、そこからはバス道を行くしかない。中千本・下千本の桜を車中から愛でることはほとんど叶わないのだ。
ここからのルートは、先ず紀伊山地の山岳信仰三大聖地(吉野・大峯、高野山、熊野三山)の一つ金峯山寺(きんぷせんじ)を拝観し、ケーブルカーの山上駅を経由して、下千本の七曲の坂道をくだって、吉野駅に至るものである。
金峯山寺は、国宝の蔵王堂(本堂)の修理が完了し3月半ばから6月初旬にかけて本尊の権現立像(木造三躯;重要文化財)がご開帳されている。近鉄等が新聞やTVでこれを宣伝していたので、この旅のハイライトの一つだった。
雑踏を抜けたところに、山中には珍しくチョッと開けた土地があり、五重塔を含む数棟の大きな建物がある。そこが金峯山寺、本堂前の桜は既に葉が大分出ている。拝観料を払って中に入ると、お坊さんによる講話か祈祷が行われており、ご本尊前の畳席は人でいっぱい。周回路はそれほどでもないが、そこからは三躯の内の左右二躯の一部が見え隠れするだけ。講話が終わったタイミングで畳席の最前列まで行くと、やっとご尊顔を拝見することが出来た。火炎を背負い、大きな口を“グアッ”と開け、怒髪は天に向かい、片足を踏み出すような姿は、どこか仁王と似ているところもあるものの、全身が青色に塗られているので、他にはない独自のもの。確かに一見の価値あるものだった。
南朝の名残に別れを告げ、下千本の中を曲がりくねった道を下って最後の観桜を楽しんだ。ここまで降りてくると大方は葉桜になっているが、それでも種類が違うものが混じり、満開がある一方で、ハラハラと落花して道をピンクに染めているものなど、さすが桜の名所、多様な楽しみ方が出来ることに関しては、ここに勝るところはなかろう。
山間の吉野駅はもう帰りの人達で混雑が始まっていた。
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(次回;高野山への道)

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