-八幡平・十和田・奥入瀬・八甲田・白神山地・鳥海を駆け抜ける-
9.白神山地-2
白神山地の総合観光施設であるアクアグリーンヴィレッジ暗門の案内所で入山携帯地図をもらい散策に出たのは11時前。来るとき渡った暗門大橋を戻り、すぐ右に折れて暗門川に沿う道をしばらく進むと休憩所が現れ、そこから今は閉鎖中の「暗門の滝歩道コース」と「ブナ原生林散策コース」が始まる。我々は一応大きな8の字を描く一周2kmのブナ林コースを選んで回ることにする。案内図には1~2時間となっているが、距離や高低差から考えて1時間足らずで周れそうだ。直近のコースでも周ってきたのだろうか、小規模な女性主体の高齢者のグループが戻ってきたところで、あまりしんどそうに見えない。「辛ければ途中でショートカットしよう」こんな気分で歩き始める。
取っ掛かりはチョッと急な登りだが丸太で作られた階段は登りやすく、それほど距離もない。直ぐにブナ林に入り木漏れ日の中を進んでいくともう前後に人は居らず、時々小さな案内表示が現れる他に人工物は何もない。嘗て歩いた同じ世界(歴史)遺産の熊野古道とはその点で趣が全く異なり、自然保存に良く気配りされている。しかし、道半ばまで進んだとき、数人の人が何か作業をしている。近づいてみると道が崩れ落ちており、その補修作業をしているのだ。どうやら自動車が走れる白神ライン、そして出発点を同じとする「暗門の滝」ルートはこのような道路破損が大規模に起こっているらしい。さらに進んで暗門の滝へつながる分岐点にはロープが張られ立ち入り禁止の警告版がぶら下がっていた。
道はアップダウンと曲折を繰り返してさらに林の中に分け入っていく。すると初めて前方からやって来る人に出会う。挨拶をすると「この先に暗門への道はありますか?」と問われたので、通行禁止になっている旨答えたが、そのまま先へ進んでいった。
林の中には小さな滝や渓流があり、全体に水分の多い地質であるが、歩行に差しさわりがあるほどではなく、森林の清々しさが満ち溢れている。ほぼ折り返し地点を過ぎたと思われるところで先ほど「暗門ルート」を問いかけてきた人と再会する。やはり“通行禁止”で踏み入ることに躊躇したようだ。その人が「あそこの案内板には熊が引っ掻いた傷があったでしょう」と言う。山歩きの経験者らしく、そんなところをきちんと見ているのだ。そんな話を聞いた後で、注意していると黒い糞らしきものが道の近くに散見される。もう暖かくなってきているのでその辺を徘徊している可能性は十分考えられる。これはあとで聞いたことだが、この付近には親子の2匹連れが棲みついているのだと言う。しかし、人を襲うようなことはなく、かえって人の気配を感ずるとむこうの方で接触を避ける行動をとるとのこと。
戻りルートの最終段階で20~30人の中学生と行き交った。どうやら地元中学の授業のようで先生がしきりに植物の説明をしていた。世界遺産の中の勉強はきっと彼らの記憶に長く残るだろう。
東西20km、南北8㎞位ある山地の極々一部に過ぎない散策路を僅か1時間足らず駆け巡ったに過ぎないが、印象深い山歩きだった。
(写真はクリックすると拡大します)
(次回;鳥海へ)
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