2015年5月9日土曜日

決断科学ノート;情報サービス会社(SPIN)経営(第Ⅱ部)-24


41989年経営トピックス-71989年総括
日本経済は依然バブルを膨らまし続けており、東燃もSPINもその恩恵に与っていた。親会社の東燃は創立50周年を迎えNKH新社長の下、本業は“強守”、新規事業は“展開”が力強く進められていたし、新規事業の一画を担うSPINは計画時から目論んでいたプロセス工業向け特化も軌道に乗り、業界での存在感も認められてきていた。私はこの年満50歳、この前後個人的にもビジネスマンとして最も充実していた時代だったような気がする。
受託システム開発は、IBM藤沢工場の購買管理システム、富士通沼津工場への技術修得を兼ねた派遣常駐、電気化学工業の全社にまたがる事務関連システム再構築、三菱油化BCLの化学分析システム、三菱石油の工場操業管理システムなど大型ジョブの引き合い・受注で多忙を極めた。
また技術システム関係では、依然としてIBM製プラント運転制御システムACSビジネスが活況で、2年前から手掛けていた大阪ガスのLNGプラント運転用シミュレータを完成させ、新しい適用分野を開拓した。また、コスモ石油、三井石油化学(現三井化学)、太陽石油などへの導入が具体化していた他、IBMがアジア・パシフィック・グループへの市場拡大を目指して活動を活発化、米国フィラデルフィアでセミナーが開催され、これらの場にはいつもSPINが重要な役割を担った。
さらに技術関連ビジネスでは、本格的にこの年から販売を開始した生産管理ソフトMIMIへの引き合いが出光石油化学、旭化成、日本石油、三菱石油などからあり、これを専門にする組織(課)を新設し、ACSに次ぐ第2の目玉商品に育てるべく取り組み体制を強化した。加えて東燃グループ向けに開発していた設備保全管理システム、MOSMaintenance On-line System)に関して、ACSビジネスで関係が出来た韓国油公がこれに強い興味を示し、ビジネスチャンスが出てきたため、東燃テクノロジー(TTEC)と組んで、この売込みを始めた。TTECが加わったのは、油公の希望が単にコンピュータソフトとしてのシステムばかりではなく、設備や部品のコード化や故障分析・分類法などにもコンサルティング・サービスを求めてきたからである。
目をグル-プ内に転ずれば、和歌山・川崎両工場の工場管理システムを、本社を含めて更新・統一するインテリジェント・リファイナリー(IR)計画、事務作業合理化OA計画、品質管理システム(LISLaboratory Information System)更新など大型プロジェクトが数多く走っており、こちらも外部ビジネスに劣らずフル回転の状況を呈していた。
このようなビジネスの他に、個人的には前々回紹介のLS研の活動、プロセス制御に関する国際学会(PCPI;京都で開催)組織委員(主にスポンサー集め)や化学工学会経営システム研究会におけるCIMComputer Integrated Manufacturing)システム実態調査主査などがあり、忙しい中にも刺激的で将来につながる仕事に携わることが出来た。
東燃グループの役員任期は通常2年を単位とする。この年は私にとって1期目の区切りになる。任命時NKH社長から「これからの君の評価は損益計算書次第」と言われた第一期目の成績は、売上:35億円、営業利益11千万円、前年に比べ、売上高では約10億円増、営業利益では約8千万円増。なんとか合格であったようである。


(次回;1990年度の経営トピックス)

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