2015年7月10日金曜日

魅惑のスペイン-4


3.バルセロナ-2
9時からいよいよバルセロナ観光だ。案内は昨日空港に出迎えてくれたマリアと称する日本人女性がガイド。バルセロナは翌朝の出発までガイドはこの人一人だったからライセンスを持っているのだろう。大型バスに添乗員のSSKさんとこのガイドを含めて16人しか乗らないので、座席は好きな所に二人分を一人で占有できる。今日のスケジュールは、グエル公園→サグラダファミリア→昼食→ホテルでシエスタ(休憩)のあと、1420分に徒歩でカサ・バドリョまで徒歩で出かけ、そこを見学後15時半ごろ現地解散。あとは19時にホテルロビーに集合してディナーに出かけることになっているのでこの間は自由行動だ。明日の朝は早くにチェックアウトしマラガに向かうので、バルセロナ観光は今日一日しかない。
バルセロナは南側にある港町を起点に次第に北側の丘に向かって広がっていった。グエル公園はその丘の中腹にあるので、中心部にあるホテルからは北に向かうことになる。道は、街中では緩やかな上り勾配だが公園に近づくにつれ急になり、何度か折り返して公園の駐車場に入る。この急な傾斜地は昔は人が住むような所ではなかったらしいのだが、ガウディはここに自ら構想するニュータウンの開発を目論んだ。そのスポンサーになったのが実業家のグエルである。ただ当時は至極不便なところで、手始めに作った数件の住宅は結局1軒も売れず(売れ残った1軒にガウディはしばらく住んでいた)、公園として活用されたのである。多くの観光客が先ずここを訪れるのは、ここの広いテラスからバルセロナ市街地が海まで一望に見渡せ、土地勘を把握しやすいことと、ガウディに代表されるモデルニスモの具体的な姿を、身近に手を触れながら知見できるところにある。確かにテラスに設けられた湾曲し腰と背中にピタリと馴染むタイル張りのベンチなど、一見奇形とも思えたものが極めて考え抜かれた作品であることに驚かされる。
この公園で約1時間を過ごし言わばガウディの前菜を味わった後はいよいよバルセロナ観光、否今回の旅の最大のメインディッシュ、サグラダファミリア(聖家族)である。バスは一旦坂を下ったあと東へ向かって20分弱、イボイボだらけの尖塔が見えてくると、車内は落ち着かなくなってくる。バスは近くには停められないので、少し離れたところで下車、周囲の建物が高いのでしばらくあの独特の姿が見えない。やっと全容が見渡せる教会前の小公園に到着。誰もかもあの奇態な形状に魅せられ、記念撮影に余念がない。惜しむらくは、林立するクレーンである。建設途上でやむを得ないが、建物に溶け込むようなクレーンが作れないものか、こんな思いがよぎる(溶け込むと安全性に問題があるかな?)。
正面ファサードに移動。聖書に書かれた物語を彫りこんだそこはユニークな尖塔同様、「よくこんな多様で膨大な数の彫刻をこんなところに!」と圧倒される。そして聖家族の下に在る青銅製の門(生誕の門)が、長年(36年)この教会の建設に携わってきた日本人彫刻家の作品と聞いて、誇らしい気分を一瞬味あわせてくれる。
中に入ると更に驚く。ステンドグラスはヨーロッパ各地の大聖堂で見てきているのでそれほど感銘をうけなかったが、天井に至る柱や梁のつくり方と光の取り込み方には感心した。外形の奇妙な形態から、当然幾何学的で単純な構造にならないことは想像していたが、先々で何本にも枝分かれしながら高みに至るその様式は、どのような発想から考え出されたのだろうか、工学的な検討はどの程度なされたのだろうか、とにかく“天才”を強く印象づけられた(あとで聞くと図面はほとんど描かず、模型で計画検討や施工指示をしたらしい;地下展示室に模型がある)。
さて現代の建築方式である。注意深く工事中の個所を観察すると鉄筋が打ちっぱなしのコンクリートから頭を出していたり、強化ガラスらしきものが使われていたりしている。おそらくこれらに外装を施して、19世紀来の外見を再現するのであろう。それはそれで合理的な考えで、これだけ長期にわたる建設工事ではなんら問題にすべきことではなかろう。1日も早くクレーンのない完成された姿を見たいものである(無論私には無理だが)。

蛇足:この教会は大きさと知名度ではバルセロナ最大だが大聖堂(司教座がある)ではない。大聖堂は旧市街にある(後述)。場所も建設時にはまわりに何もない農地だったことが往時の写真でわかる。

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(次回;バルセロナ;つづく)

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