8.浅間温泉
学生時代からの一泊以上の個人旅行(出張でない)を行き先別に振り返ってみると、断然長野県が多い。一人で、二人で、家族で、学友や職場の同僚と一緒に。宿泊地は、東は軽井沢・清里・海ノ口・志賀高原、西は上高地・黒部、南は木曽福島・昼神、北は飯山・白馬、中心部では長野市、松本市(安曇野を含む)は無論、美ヶ原・蓼科・諏訪などがあり、これに数々の訪問地(浅間山・乗鞍山・妻籠宿・馬籠宿・白樺湖・松原湖・天竜峡・駒ケ根山など)がさらに加わる。山へ、川へ、森へ、湖へ、そして温泉へ。季節は春夏秋冬すべてあり。乗り物は、鉄道で、長距離バスで、レンタカーで、そして自分のクルマで(現在までに9台所有し、7台が長野県を走っている)。これだけ巡ってもまだ行きたい場所、走りたい道がいくらもある。その一つが浅間温泉だった。
この温泉の名前を知ったのは1963年夏、和歌山工場の仲間と上高地から美ヶ原へ向かう途上だった。松本を出てしばらくするとバスがここで停まり、かなりの数の登山客が乗り込んできたからである。「浅間?浅間山が近いのかな?」こんな見当違いの記憶が今に残る。2回目も安曇野から美ヶ原を経て蓼科へ抜ける途上だった。松本市街に続いたそこは、景観に惹かれるような土地ではないものの、何となく松本の奥座敷的な雰囲気があり、「もしかすると城下町松本の名士たちが利用してきた由緒ある旅館があるのではないか?」こんな動機でこの地を2泊目の宿泊地に選んだ。
善光寺を発ったのが3時半、長野から松本に至る一般道はJR篠ノ井線に並行する国道403号とこの地の幹線道路国道19号を南下するルートがある。ドライブの楽しさは圧倒的にこちらの方だが、事前調査ではいずれも所用時間は2時間強なのでチェックイン予定時刻の5時を確実に過ぎてしまう(問題があるわけではないが)。そこで長野道を利用するようナビをセットした。すると善光寺から市内を南に向かい長野ICで高速に乗り松本ICで下りる案を選んできた。豊科・岡谷間は何度か走っているが、長野から豊科までの道は初体験である。距離は70km強、予定所要時間は1時間20分、大部分が自動車専用道の距離のわりに時間がかかる感じがしたが、これで進むことにする。
善光寺平から、安曇野平を通り松本平に抜けるわけだから比較的平坦な道ではあるが、さすが山岳県、山に囲まれた雰囲気は独特だ。そのわりにトンネルが少ないのがいい。南信、北信の中心都市を結ぶ道だが、思いのほか交通量は少ない。途中で松本ナンバーのスバル・アウトバックが一気に追い越して行ったので、これをフォローすることにする。「地元のクルマなら勘所(つまり速度違反取締)は分かっているだろう」そんな考えからである。それから小一時間、時にはこちらが先になりながら松本ICまで“相当なスピード”で一緒に走り、そこから市内に入ってもしばらく並走する形になった。予想通りドライバーはかなり若い人だった。山中の自動車道で思わぬ楽しさを味あわせてくれた若者に感謝。
それにしてもスポーツカーと互角に走り抜いた国産SUVの実力を見直し、それがクルマと市場を絞り込んで独自の評価を得ているスバルだったことがうれしかった。それは世界で2社しかない水平対向エンジンをパワーユニットにするいわば同志意識のようなところからきている。
松本ICは市街の西側に在り、浅間温泉は東の端にある。買い物や早目の退勤時間と重なっているのだろう。市中はすでに渋滞が始まっており、これを抜けて今夜の宿、界松本に着いたのは丁度5時だった。飛ばしたわりにナビの予測所要時間が正確なのは、長野・松本両市内を抜けるのに結構時間を要したことによる。このあたりまで予測するナビはなかなかの優れものである。
(写真はクリックすると拡大します)
(次回;界松本)
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