5.グラナダ
異常な早朝出発の最大の理由は、白壁の村ミハス観光だけにあったわけではなく、グラナダにあるアルハンブラ宮殿見学こそ本日最大のハイライトだからである。見所が多いわりに、この宮殿見学の一部は時間予約制のためあまり自由度がないのだ。ミハスがマラガから西へ20km程度だったのに対して、ミハスからグラナダまでは東へ100km以上、バスで約2時間を要する。12時半にミハスを発ち痩せた丘陵地帯に開かれた2車線の自動車専用道路をひた走る。景色は単調、昼食後のシェリー酒も効いて睡魔が襲ってくる。「いまグラナダの外環道に入りました」とのSSKさんの声に目を覚ます。ひと眠り前の道路状況とは大違い、3車線の道は流れてはいるもののクルマでいっぱい。予想外に大きな町であった。とは言っても自動車道沿いの一帯は新開地、あまりカリフォルニアの景観と変わらない。それにしてもスペインの自動車道路なかなか立派なものだ。しかもタダである。
バスは市街地に下りることはなしに丘陵に挟まれた狭いICで一般道に出ると直ぐに道路際に立つ高層ホテル前に駐車した。今日の宿泊場所、マシア・レアル・デ・ラ・アルハンブラである。ホテルに隣接して若干の建物は在るものの、ここだけポッツーンと孤立した何とも辺鄙な場所だ。
3時20分頃宮殿に向かう予定だが、一先ず部屋にチェックイン。内外装ともアメリカンスタイルで風格はないが、清潔で使い勝手は良さそうだ。ロビーで紹介された通訳はバルセロナ同様“アンナ”と自称する日本人女性、この地に長いようだが何かくずれた感じが気になる。ホテルを出ると「指定時間の調整に」と言って隣のビルに案内される。日本人の観光客が来た時だけオープンする、日本人経営のお土産物屋である。ホテルを挟んで反対隣りにはディナーを摂ることになるレストランがあったし、翌朝別の日本人グループと出くわしたから、さしずめ日本人御用達観光複合施設といったところであろうか。それ以外は谷間を走る自動車専用道とそれに平行する一般道。とにかく散策するところさえない殺風景な所である。ただこの日の夜を含めた行動や翌日の移動を考えれば、あながち悪い位置ではなかったようにも思う。
ホテル前を出発したバスは一般道を西に向かい、やがて道は上りになりつづら折りしながら丘を登っていく。登に従い下に比べると木々が少しずつ増え、配置や剪定具合もよく整えられ、道は平坦になりいよいよ宮殿が近いことが分かってくる。行き止まりはロータリーになっており、その先に宮殿見学受付のパビリオンがある。ここでスペイン人男性のガイドが加わるが、彼は日本語を話せず、アンナが実質的にはガイドを務める。
グラナダの城塞(宮殿を含む)は東西に延びる丘の上に在る。その北側にこれに並行する形で丘があり、二つの丘に挟まれた谷に旧市街があって、これは北側の丘の斜面を這い上がって広がっている。つまり二つの丘とその間にある谷が古くからのグラナダであり、城塞へは旧市街からアプローチするのが本来の道筋なのである。言い換えれば我々は裏側(かつては防壁だった山側)から城塞に辿り着いたことになる。受付パビリオンが在るのも古来からの入場ルートではなく、これも裏(新)門である(正門は西側に在る)。往時を偲ぶならば、旧市街から城塞の西にある“ザクロ(カスティーヤ語で“グラナダ”と発音)門”を通って宮殿に至るのがいいらしい。この辺りの事情はなかなか一見の観光客には分からない。
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(次回;グラナダ;つづく)
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