12.OSIとPI-2
OSIとの接触が始まったのは、この年の4月ソウルで開かれた韓国化学工学会で「我が国プロセスCIMの現状と課題」を発表する前後だったと記憶する。と言うのもOSI訪問が米国で開かれる予定のPSE(Process Systems Engineering)関連国際学会の後だったからである。この国際学会はFOCAPO(Foundations of Computer Aided Process
Operations)と略され、2年毎にプラント設計、プラント運転、プラント保守におけるコンピュータ利用をテーマにコロラド州の避暑地で夏休み中に開催され、化学工学会の関連研究会が毎回メンバーを送っていたものである。過去の組織委員やプログラム委員には日本の大学の先生方も名を連ねており、その関係で声を掛けられ、企業からも何人か毎回参加していたようである。この年私が参加することになったのも、PSEの世界でよく知られ、経営システム研究会でご一緒していた筑波大学経営大学院教授の梅田先生から「調査結果を是非発表して欲しい」と誘われたことによる。韓国の発表は前年末に決まっていたし、同じ資料で話をすればいいので二つ返事でお受けした。
OSIのPatとのやり取りが始まった時、この会議の後に訪問スケジュールを組んだ(そのことを特に明記しなかったが)。先方から「それでOK」の返事をもらったのは連休前後。しばらくするとFOCAPO事務局から開催案内が送られてきた。日本からの発表は私(“Outlook for CIM in the Japanese Process Industries”)の他に出光興産の名原さんが“Total Productive Management in the Refinery of the 21st Century”と題するテーマでプレゼンテーションを行うことが記させており、このセッションのチェアマンには、これもプラント事故解析で著名な東工大の大島先生が当たることがわかった。さらに驚いたことに旧知でMIMI(生産管理ソフトウェア)販売提携関係にあるCDS社創設者のTom Bakerの名前が発表者(“An Integrated Approach to
Planning and Scheduling”)として載っているではないか!「これだけ知り合いが居れば気が楽だ」そんな気持ちで、再度プログラムを見直してびっくり!月曜日のトップに“Data Treatment and Applications” P. Kennedy, Oil Systems Inc.,とあるではないか!同じ会議の発表者同士であったわけである。
会議開催前日7月17日シアトルからデンバー経由で開催地クレステッド・ビューに向かった。デンバーからは小型プロペラ双発機、同乗者の中に同じ会議に参加するATTの女性エンジニアが居り、その人が借りた四駆(雪が残っているかもしれないのでこれを予約したらしい。確かにホテルから先にまだ閉鎖されている道があった)でホテルまで同道、ここで日本からのメンバーと顔を合わせた。大島先生、梅田先生ともご夫人とご一緒、すっかり避暑気分である。こんな学会は初めてであるが、学年度が変わるこのシーズン、欧米ではこんな方式が一般的であるらしいことを後で知った。
18日は日曜日、午後からキーノートセッションが始まり、夜はパーティ。Patを探したがどうやら来ていないようだ。ここでTomにも会い、よもやま話をしているうちに会議後の予定になった。「先ずテキサスの友人を訪ね、次にオークランドに移ってOSIのPat Kennedyを訪れることにしている」と話すと「ウーン?」と言う表情をして何やら意味ありげにニヤッとする。口したのは「彼はクレイジーだぞ!」「エッ?どう言うことだい?」「(Windows)NTに入れ込んでいるんだ!信じられるか?Windowsだぞ!あんなものがプラントで使えると思うか?」 NTはNew Technologyの略、次期PC用OSとしてマイクロソフトが鋭意開発しているものの、ベースは(しょっちゅう止る)個人用・オフィス用と本質は変わらない。誰も工業用(特に生産現場)で使えるとは思っていない時期である。「確かにクレイジーだ!」
(次回;OSIとPI;つづく)
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