12.OSIとPI
文献の著者名の下にはOil System Inc.(以下OSIと略す)とあり、論文最後の著者紹介には、カンザス大学で化学工学の学位(BS、PhD)をとった後、Shell
Development(Shellの米国研究機関)やTaylor Instrumentなどでキャリアーを積み、今の会社を設立としたと記されていた。ShellやTaylorはよく知っていたが、OSIはいかにも石油に関係が深そうな名前だが、全く知らなかった。また、論文中に登場したPI(あとで知るが、Process Informationの略、彼らは“パイ”と呼んでいた)言うソフトウェアも直ぐには何も思いつかなかった。手掛かりになるのはどうやらこのソフトがDEC社製PDPミニコンの上で動いていることらしいとの情報だけだった。
1992年度の売上・営業利益も一見順調に推移し(売上高;約46億円、営業利益;約1億3千万円)、親会社もそれなりの評価をしてくれていたが、気になることは売上高に対する利益率が低下傾向にあることだった。主因は最も利益率の高いIBM製品ACS関連サービス需要に陰りが見え始めたことにある(いたるところで「いまどき汎用機ベースはないでしょう」と揶揄された)。年を越すと「プラント操業管理用基幹ソフトの新しいものを探さなくては!」が経営企画・技術システム担当役員として焦眉の急になってきた。
1992年末以降しばらく関わることはなかったPI、他のプラントリアルタイム処理ソフトにも特に目を惹くものは見当たらなかったことから、取り敢えずこれへのアプローチを探ることにした。
先ず調べたのはOSIと言う会社だが、あとで分かることだが従業員数十名の零細個人企業、まるで取っ掛かりが見つからない(今ならGoogle検索もあるが)。日本IBMや日本DECに調査を依頼しても、直ぐには何の情報も返ってこなかった。実はこの年初、前年化学工学会経営システム研究会で広範な調査を実施した「我が国プロセスCIM実態調査」の結果を夏に米国で開かれる関連学会で発表するよう依頼されていたので、その時にでも現地でこの会社の手がかりを求めることも考えていた。そんな矢先、日本DECの営業マンからOSIの電話番号・FAX番号が分かったとの連絡がきた。いきなり電話で話すには背景もあり、短い時間では無理と考え、一先ずFAXで「文献を読み貴社とPIに興味を持った。夏に渡米する機会があるので、立ち寄らせ、話をさせてくれないか」との問い合わせメッセージを送った。しかし無しのつぶて。DECから提供された情報には何故か(米国企業にもかかわらず)ドイツの電話番号とFAX番号も付されていた。仕方なく今度は此処へ同じ趣旨のFAXを送ってみた。やはり返事は来なかった。だがそれから2週間くらい経ったころ、論文の著者名を記したFAXが米国からやっと届く。内容は「そちらは何の会社か?当社へのコンタクトは一体何が目的なのか?」単刀直入である。これもあとで分かることだが、ドイツのOSIはPatrick Kennedy(以下Patと略す)の大学時代、さらにShell Development時代の友人でドイツ人、OSIヨーロッパ法人を経営していたのである。彼から「変なFAXが来たけれど・・・」と連絡が入ってのことだったらしい。
こちらの返事には「Exxon、Mobilの関係会社東燃の子会社でプロセス工業を主たる顧客に持つ情報サービス会社であること、調査の上で出来ればPIを日本で販売したい」旨記し「既に日本で取り扱っている会社はあるか?」と付記した。折り返し直ぐに「主旨は分かった。いつでも来社を歓迎する」「日本とのコンタクトは、海外で千代田化工とあるが日本国内に販売代理店は無い」と言うものだった。「上手くするとMIMI同様国内総代理店になれるかもしれない」これが次期主力商品具体化への直接コンタクトの萌芽であった。
(次回;OSIとPI;つづく)
1 件のコメント:
真殿さん、 東燃ゼネラル石油中研OBの伊藤です。こんばんは。今回、PI(パイ)システムが出てきました。中研がまだ埼玉(現在の自宅の隣)あったころ、H-OILのPilotプラントにあり、運転は横河のDDCで運転コントロールし、データ採取をしていました。当時PIシステムがあり、運転データをエクセルに落として運転データ解析を私がしていました。中研のPIシステムとは、真殿さんが2/14に書かれたPIシステムのことでしょうか。懐かしくなり、質問しました。 伊藤 直之/
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