13.CIMシステムインテグレータへの歩み
会社設立当初にはシステムインテグレータと言う言葉は無かった。情報システムの構想作りから、システム開発、プラットフォームとなるコンピュータや通信システムを調達し、そこに開発したアプリケーションソフトを載せ、実用に供するまで、一貫サービスを提供するのがその役割なのだ。SPINが目指したのはこのようなサービスを主に広義の化学プロセス顧客対象に行うことだった。IBMのACS、横河電機のCENTUM、会計や購買業務の受託開発などでそれらを実現し、その後米CDS社の生産管理システムMIMIなども戦列に加え、独自のポジションを業界に確保しつつあったものの、汎用機ベースのACSは峠を越し、代わるプラント運転のリアルタイムデータ収集処理システムが求められつつあった。幸いこれはOSI社のPIを導入することで一応道筋が出来た。
しかし、これだけでは化学プロセス企業の統合的な情報システムを構築できるわけではない。プラント保全管理、品質管理、受注出荷管理などが工場管理の面で必要だし、本社サイドでもこれら工場情報システムとリンクする、多くの経営管理用情報システムが整備されなければ、ITを活用した全社ベースの新しい経営システムは完成しない。その理想の姿がCIM(Computer Integrated Manufacturing)システムである。
先ずプラント保全管理システムについては、東燃グループ向けに1980年代初めから、HPのミニコン(HP-1000)をプラットフォームにしたMOS(Maintenance Online System)と称するシステムが、計装・電気、回転機械(ポンプ、コンプレッサーなど)、装置(配管、塔槽類など)向けに順次開発され、実用に供されていた。これをUNIXベースのワークステーションに置き換えるプロジェクトが立ち上がっており、オリジナルに手を加えて外部販売も可能なようにして、PLAMIS(PLAnt
Maintenance Information System)と名付けて売り出すことにした。この機能強化システム作りに寄与したビジネスに1990年代初期の韓国油公向けプラント保全システム開発支援がある。このシステムの核はMOSなのだが油公はこれをそのまま導入するのではなく、当時最新の情報技術と東燃のプラント保全方式を参考にして、新しい保全体制を作り上げようと意図するものだった。従って、このビジネスはSPINばかりでなく、東燃テクノロジー(TTEC)と共同で当たり、SPINは油公とTTECからも学ぶことが多かったのである。またMOS開発時代から化学工場のプラント保全や副資材(触媒や添加剤など)用在庫・倉庫を持っていたので、それをPLAMISの中に組み込んだりもした。お蔭で、PLAMISは石油関連会社ばかりではなく、トヨタの関係会社(スティールコイルセンター)から引き合いを受け、受注するほど顧客対象を広げることにつながった。
第2の商品は、これも石油化学(TCC)が先鞭をつけグループ内の工場試験室で使われた品質管理システムである。小型プロコンをプラットフォームした既存システムもダウンサイジングの環境下でワークステーションへの置換えニーズが高まり、Lab-Aidという名のもとに石油・石油化学以外にも使える新規機能を盛り込んで、食品や薬品、環境測定などへの用途も勘案して鋭意開発されていた。
と言うような訳で、1993年末頃までには、概ね化学工場向けの情報システムに関しては、一応品ぞろえも整ってきていた。問題は、これら個別のシステムを結びつけること、さらに連動する事務関係(販売・経理・購買など)システムを、本社を含めて如何に構築していくかであった。事務系や経営管理分野にもパッケージ利用の波がひたひたと迫りつつあり、受託開発で安穏としてはいられない時代がそこまで来ていた。
(次回;CIMシステムインテグレータへの歩み;つづく)
0 件のコメント:
コメントを投稿