3.津山-2
一人ドライブ旅の宿はビジネスホテル(現役時代の経験から、男一人で泊まるにはこれがコストパフォーマンスを含めて最適)を原則として選んだ(結果的に門司港は違ったが)。津山の場合産業都市でも観光都市でもないので、選択肢は余り無いように見えたが、“国際”や“グランド”などと名のつくものがあり、駐車場などを含めるとその方が少し良さそうであった。しかし、“寝るだけ”には勿体無い気がして初志貫徹で楽天トラベル評価のお薦め順位が高かく(とは言っても得点は3点台半ば)繁華街に最も近い津山セントラルホテル・アネックス(新館)に決めた。現地でカーナビが「目的地周辺です」と案内をやめた所にビルが在るが直ぐにホテルと分かるような造りではなく、交通量が少ないので停車して確かめると、そのビルの喫茶店のような入口に目立たぬ看板があった。中へ入ると狭いフロントデスク(一人しか入れない)に中年のおじさんが居り、左側に喫茶コーナーがある。来意を告げると丁寧に対応してくれ、(契約)駐車場の位置や使い方を教えてくれた。
駐車場にクルマを預け(時間貸しで自動出入りだが、宿泊者は別扱い)、あらためてチェックイン手続きを行う。事前に有線LANが仕える部屋を頼んであったのでLANケーブルとカギを渡される。部屋は7階。エレベータホールにはWi-Fiが置いてあったから無線もOK。この辺りの配慮はいまやビジネスに限らず必須なのだろう。ワンフロアーの部屋数は六つ程度で3階から8階までが客室だから、それほど多く泊まれるホテルではない。
部屋へ入ると典型的なビジネスタイプ、動き回れるスペースはミニマム。ビルの外見やフロントの感じから(新館とは言え)“かなりの年代もの”であることが一見して分かったが、部屋も同様。電気のコンセントは後から多分岐型を追加したり、折りたたみアイロン台は使う際はベッドの上に展開する形式、“努力の跡は窺えるが、(本格的にリニューアルする余裕のない)きつきつの経営状態も見て取れる”、そんな部屋であった。ただ、一人で一晩過ごすだけなら、清潔・セキュリティは満たされているので、これでまあ満足すべきだろう。
こう言う中小都市で一人での晩飯は難しい。チョッと飲みたいとなるとなおさらだ。ガイドブックには“ホルモンうどん”が名物とあるが、とても食べる気にはならない。しかし、チェーン店も嫌だ。土地の人が出かける気の利いた小料理屋がいいが、よそ者に疎外感を持たせない店を探すのは至難の業だ。ここでフロント、否宿泊先の評価が決まる。結論を先に言ってしまえば、今回のこのホテルはこれで◎である。
城跡と城東保存地区を観たあと宿に戻って一休み。7時頃フロントに下りて例のおじさんに夕食場所の相談をする。薦めてくれたのは「ここは津山牛が売りです。牛の料理はどうですか?」「あまり重い料理は摂りたくないのですが・・・」「牛の串焼きなどどうでしょう?一本からOKです」「(それならいけそうだ」」「“小次郎”と言う居酒屋風の店です」 そこはホテルの隣の交番の角を入って直ぐの所に在るのだが、入口が少し奥まった位置にあり、看板が小さい。おまけに暗いので字もよく読めない。一度通り過ぎて戻る際にやっと見つけた。引き戸を開けると、履物を脱いで上がる形式だが、半オープンの個室仕立ての部屋が廊下の左右に並んでいる。若い女性のグループなども居て、カジュアルな感じにホッとする。「一人」と告げると「カウンターで良いでしょうか?」との問い。無論問題ない。「調理場の前で済みません」と案内される。部屋は結構埋まっているが、カウンター席は誰もいなかった。サラダ、オックステールの薄切り炒め(これは生ビールによく合う珍味だった)、そして走っているうちから渇望していた生ビールを注文し、メニューを見ながらメインを選ぼうとするが、牛の串焼きは種類が沢山、結局無難なフィレをお握りと時間を置いてからもらうことにこする。カウンター越しにこの店オリジナルと言うオックステールを褒めたところ、「これはサービスです」と牛刺しが出てきた。もう一杯飲まないわけにはいかない。最後の食事には牛汁がついてきた。これだけ食べて飲んで勘定は3千円でお釣りがきた!思わず「いやー安いなー」とつぶやいたら、女将さんと思しき人が「サラダと串焼きは半人前にしておきましたから」とおっしゃる。心憎い配慮に感謝。好印象の津山であった(ただ翌朝も身体から牛のにおいが発散している気分ではあったが)。
(写真はクリックすると拡大します)
(次回;山陰への道)
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