1.なぜ台湾?
国内ドライブ旅行と海外旅行を少なくとも年1回。2007年勤めを辞めた後、そんな時間の過ごし方をしたいと思った。その年は英国へ半年近く出かけたので、翌2008年からこの計画を実施し、国内旅行は新潟から信州にかけて走り、海外はタイとイタリアへ出かけた。両方とも現地で日本人を対象とする小旅行社を利用した個人旅行である。
しかし2009年フランス旅行を契約寸前まで詰めたところで、100歳に近かった義父の体調が優れず、その後義母も介護の身となり、結局二人が他界するまで、専ら国内を走り回り、海外は封印することになった。再開したのは一昨年のフランスからそれ以降昨年のスペインと、現役時代ほとんど機会のなかった西ヨーロッパへツアーで出かけた。「今年はドイツ」と決めていたが、行けば訪れたいところがいろいろあり、それもかなり特殊な分野(戦争と広義の機械技術;戦史と関わる場所と兵器・自動車・飛行機・鉄道)なのでツアーでは難しい。昨年来あれこれプランを練っていたが、本欄でも称賛したドイツ鉄道の正確性やサービスに問題のあることを現地を訪れた東燃時代の友人から指摘されていたこと、加えて年末にかけて難民・テロ問題が派生して、家内から安全に関し疑念が呈せられたたこともあり、まあツアーなら大きな問題になることはないだろうと思ったが、当分ヨーロッパは様子を見ることにした。
アフリカ・中南米・中東などには全く興味がないし、北米は数え切れないほど出かけている。中国も北京と万里の長城を垣間見たので特別行きたいとは思わない。東南アジアやニュージーランドへは家族旅行で何度か訪れている。インドネシアやタイは家内も気に入っているのだが直ぐ出かけたいほどではない。そんな消去法の中から浮かび上がってきたのが台湾である。私は仕事で1994年一度1週間程度台北・高雄に出かけているが、休日の半日故宮博物館を見学しただけで他の観光はしていない。家内にとっては初めての場所である。ではどんな旅にするか?
現役時代(1980~90年代)業界および学会関係のツアーに2度ほど参加した。いずれもそれまでに何度も出張している米国である。その時アゴ(食事)・アシ(交通)付の旅も楽でいいな~と思っていた。一昨年・昨年のフランス・スペインはそんな一見楽ちんは旅、成田から添乗員が同行するツアー、年寄りにはそれなりに諸事面倒が少なく経済的(確実に安い)でもあったが、何か物足りなさも残るものだった。実は“面倒なこと”こそ大事な旅体験なのだと気付いたのである。
台湾は長い歴史の中華帝国において“化外の地(皇帝の支配しない土地)”であった。従って、民俗学的な視点を除けば、歴史的な見どころはない。富士山より高い山(玉山;3,952m)は在るものの世界的に知られた景勝地もない。歴史と景色を楽しめない海外旅行で残る関心事は食と土産・名産品と言うことになるが、買い物にも惹かれるものはない。食はともかく「何か台湾ならでは」はないか?行き着いたのが鉄道である。九州ほどの島だから、いろいろな鉄道を乗り継いで、一周してみることはそう難儀ではなかろう。さらに阿里山森林鉄道の三重ループは世界の鉄道ファンによく知られている。食はその過程で楽しめるに違いない。
紐解いたのは昔読んだ鉄道紀行家宮脇俊三の「台湾鉄路千公里」と大学生時代からのバックパッカーで既に60歳を超えた下川裕治の「週末台湾でちょっと一息」である。宮脇の旅は1980年、8日間で台湾国鉄全線制覇、下川のものはごく最近(2013年)の報告である。両人とも旅のベテラン、とても同じようにいかないことは分かっていたが、それらの情報やガイドブック地球の歩き方を参考に、とにかくラフな“旅行スペック(仕様書)”を9月初旬作って、日本人を主要顧客とする台湾の旅行社に送り、コメントを求めた。返ってきた答えは「宿泊地・訪問希望地、日時などをあらかじめ決めて欲しい。また西海岸都市のホテルは扱っていないので特定して欲しい」とのこと。これではただ手配をするだけで現地に根ざしたコンサルティングサービスは全く享受できない。仕方なくJTB横浜の個人旅行取扱部門に出かけ、同じ仕様で大雑把な旅程と見積もりを頼んだ(ここの評価はいずれ一項設け報告する)。ここも取っ掛かりは台湾の旅行社同様、端から細かい希望を求められたが、対面だけに割と具体案に早く達することができた。
こうして決まったのが11月20日に羽田を発つ5泊6日の台湾一周鉄道旅行である。
(写真はクリックすると拡大します)
(次回:旅程概要)
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