6.隠庵ひだ路
今回のドライブ行で唯一の温泉場かつ日本旅館。この地には南から、平湯・福地・栃尾と三つの温泉が在る。平湯は高山と松本を結ぶ要路にあるのと新穂高から一番遠いので選択肢から外し、栃尾と福地で部屋数の少ない所を当たっているうちに“美味しいものを少しずつ”プランに惹かれてここに決めた。予約は無論インターネット、“JTB・るるぶ”を初めて利用してみた(カード会員なのでポイントがたまる)。詳細情報をチェックしている時にチョッと気になるところがあった。“カード支払い不可”である。「いまどき?!」と思い電話で確認すると「現金でお願いします」との返事。この10年間のドライブ行で2回目である。最初のところは北海道新得のペンションを予約した時で、ここは宿泊前に振込だった。家族経営のペンションでは資金繰りが厳しいことも予想されたから、まあ納得したが、今回はJTB推薦のわりとグレードの高そうな旅館である。理由は最後まで分からなかった。直前キャンセルなどかえって回収不能で困るのではなかろうか?
ロープウェイから平湯方面へ戻り、分岐路で国道471号線の西側を並走する道をとる。この温泉専用と思われる道はほとんど交通がなく、左右にポツンポツンと現れる旅館も極めて地味な作りが多く、商店は皆無だ。人を見かけることもまれで、どこの旅館の看板も、パッと遠くから認知できるものはない。カーナビが「目的地周辺です。これで案内をおわります」と言われてもそれらしき所が見つからず、やむなく携帯で尋ね、温泉街を貫く一本道の行き止まりを国道方面へ戻る一角にそれは在った。黒板塀で囲まれた平長屋が続く造りは確かに“隠れ庵”に相応しい。内部も黒やこげ茶基調で統一され一見古いお屋敷風だが、何か落ち着かない。床が何度も塗り替えられそれがピカピカ光っているからだ。
チェックイン手続きの際この温泉の見所など説明してくれたが、夜は他の旅館の温泉を利用できる共通券があるので、特色のある温泉を巡ってみることと朝市で新鮮な野菜が求められるくらいだった。つまり静かな湯治場なのである。これには大いに満足。
部屋は玄関上がりの間、次に10畳ほどの居間兼寝室、その先に6畳の部屋があり炬燵が置かれている。この部屋の左にはトイレ・洗面があり洗面所は内湯につながっている。6畳の正面にはガラス戸(ブラインド付き)越しに部屋専用の露天風呂が見え、内湯からそこへ出入りするようになっている。ここの売りはこの専用露天風呂である。例によって木部は黒・こげ茶、壁や襖は白や薄い色、何となく古民家風ではあるが、伝統的な和風とは違和感がある。草津の老舗旅館でも味わった妙な和洋折衷に共通するところがある。外国人にはこのくらいコントラストが強い方が良いのだろうか?
疲れた身体を先ずこの露天風呂で癒す。これはなかなか良い!風呂上がりの缶ビールを一本やって、夕食までひと眠り。
夕食は食堂で摂る。この食堂も真ん中に囲炉裏が据えられた畳敷の大広間。各テーブルも中央は囲炉裏式でイワナや五平餅をここで炙るようになっている。料理は期待通りだった。何といっても食材がすべて地元産なのが良い。造りも川魚(大ます、鯉)だけ、この他鮎、岩魚、肉は飛騨牛、野菜は当然山菜を含めて近くで採れるものばかりだ。調理法や味付けもおおむねこの地方のやり方に若干手を加えた(工夫した)もので、差別化が良くできていた。普段日本酒をたしなまない私だが、地酒の冷酒で和風“美味しいものを少しずつ”フルコースを堪能した。
部屋へ戻ってもう一度専用露天風呂へ。あとは例によって爆睡である。
(写真はクリックすると拡大します)
(次回;金沢へ)
0 件のコメント:
コメントを投稿