2017年9月25日月曜日

決断科学ノート;情報サービス会社(SPIN)経営(第3部;社長としての9年)-33


16.情報サービス会社再編成
9年の社長在任中、私自身が中心になり手掛けた大仕事は、東燃から横河電機への株式譲渡とこれから述べる横河グル-プにおける情報サービス会社再編成の二つと言っていい。第一の株式譲渡については、東燃の大株主であるExxonMobilEM)の本業回帰による子会社リストラと横河電機のソリューションビジネス戦略(ETSEngineering Technology Solution)にあったことは既に述べた。ユーザーノウハウを取り込むことはソリューション提供に不可欠であったからである。しかし、横河グル-プ入りして分かってきたことは、トップの掛け声に比べ、ETSの実態があまりにもお粗末だったことである。一言で例示すれは「計測制御システムで何かお困りのことやお手伝いできることはないでしょうか?」と問い、出来ることをやるに過ぎなかった。これも問題解決(ソリューション提供)に違いないが、あまりにも受け身なのだ。加えて、ソリューション提供のカギを握る情報サービス会社の効率的運営に関しても、甘さが目立った。要はほとんどの会社(YDCだけは異なったが)が横河製品周辺のソフトウェア技術を提供して、経営を成り立たせていただけだったからである。これでは単なる直系の下請け・受け皿会社である。
全社戦略であるETSの問題点と改善案については、何度か今まで本欄で指摘しきたし、子会社だけで解決するには問題も大きいので、ここでは情報サービス業効率化の視点から再編成を語ることにする。
情報サービス業の根幹は人である。IT基本技術の専門家、適用業務用パッケージに精通したSE、業種・業務に合った業務分析・設計を行うSE、それを動かすプログラム開発を担当するプログラマー、全体プロジェクトをまとめるプロジェクトエンジニア、それを支えるセキュリティや原価計算・収益管理を行う専門家、実用化されたシステムの運用・保守サービスを担う者など様々な職種が必要である。そして情報サービス業は受注産業である。つまり、これら専門家の需給バランスは変動するのが当たり前。だからこそ早くから、複数の業務提携会社を持ち、派遣会社との関係を密にして、その変動に応じてきた。同じような会社がグループ内にいくつもあれば、先ずその合理化から始めるのが経営効率改善への第一歩である。こんなことを、1999年グループ内社長研修の場で発言したことは直後にトップに伝わっており、特に旧知でこの当時総務・人事を担当していたMZG専務から「MDNさんの話聞きましたよ。本気で検討してくださいよ」と告げられていた。ただこれはパーティのような場であったから、話はそこで止まっていた。
1999年美川英二社長が現役で急逝、後継のUCD社長は2000年いっぱいをかけて、自らの経営を進めていった。美川さんの拡大策の全面的見直しとそれに伴う組織改訂やそれに関する役員・上級管理職人事である。そこで誕生したのがシステム事業本部を解体してできた情報システム事業部である。横河の旗艦製品は分散型ディジタル制御システムCENTUM。この販売・構築・運用には当然ソフト技術提供が必要だ。この機能は制御システムを扱う事業部の専管業務となり(本体の事業部とYSE;横河システムエンジニアリング)、それ以外(生産管理、保全管理、品質管理、技術管理などに関連するシステム)を情報ソリューション事業部(以後情ソと略す)が担当することになる。事業部長はISIさん。彼の傘下に入った情報サービス子会社は、横河電機本体の情報システム部が独立したYIT(横河情報技術)、広島に本社を置き中国・九州を営業域として活動するYTS(横河技術サービス;前回YESと略したが誤り)、それに1980年代に買収し、一部他の資本も入るTDC(横河ディジタルコンピュータ)とSPIN4社である。ISIさんはしばらくそれぞれの会社を従来通りの経営に任せたが、2001年が押し迫ると、事業部本体も含めて見直すことを始める。狙いが全体のリストラクチャリング(首切りではなく、真の意味での再構築)である。


(次回;情報サービス会社再編成;つづく)

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