6.ホテリアアルト-2
国内旅行の大きな楽しみの一つは温泉である。今回も宿泊予定地の必要条件はそれにあり、この地域・このホテルを選んだ。だから「とにかくまず風呂」と荷物の整理が済むと5時過ぎに、1階の浴場に向かった。脱衣所の棚には8個の籠が置かれていたから、一応これが定員なのだろう。二つの籠に浴着が入っているので先客が二人いるわけだ。引き戸を開けて中へ入ると、すぐ左側に洗い場が三つある。二つは並んでおり、もう一つ奥に一段高く暗い場所に在る。何故そこだけ別の作りになっているのか、最後まで分からなかった。内湯の湯舟は無人だったが、露天風呂に二人入っており、その内の一人はこちらが身体を流している時出ていった。もう一人は露天から内湯に移り直ぐに上がる気配はない。露天は今や無人だが、取りあえず内湯に浸かってみる。二人ならまずまず余裕もあるが、三人だとチョッと窮屈な感じだ。先客は直ぐに出て、あの一段高い洗い場に移っている。今度は露天に出てみる。ここもほぼ内湯と同じ大きさ、庭は夕闇の中でライトアップされているが中途半端な明るさ、木々が間近に迫り、景観はあまり開けていない。次いでフィンランド語のホテル名だからサウナがあるかも知れぬと辺りをチェックしてみたが、見当たらなかった(実際存在しなかった)。就寝前もう一度出かけてみた。一人だけで、森閑とした冷たい空気に触れながら、漆黒の中のライトアップを眺めながら露天風呂に浸かっている気分は悪くない。温泉に関する評価は「一人二人の時は良いが、もう少し広いとな~」と言うところであった。
部屋へ戻って冷蔵庫の缶ビールを一缶空けて一休み、これは宿泊料の中に含まれる。6時半に予約した夕食に出かける。出迎えてくれたのはダークスーツのウェイトレス。レストランは本館1階からT字型に突き出しており、指定時刻に行ったが、既に数組のペアーやグループが食事を始めていた。T字型の突き当りが大きな暖炉を囲む部屋で7卓(各4席)、そこに至るやや通路風な空間に6卓(各4席)あり、我々は通路風の一画に案内された。ここも飲み物は特別なもの(一部のワイン)を除き飲み放題である。ご馳走が控えているのでビールはパスして、地場の大吟醸“会津ほまれ”を頼む。
先ず前菜;5種ある。基本的にフレンチだが冷酒にもよく合う。次いで磐梯山の大根と地鶏のスープ。魚は鯛とサーモン、浜アサリ。メインの肉は和牛のテンダーロイン。どれもソースが凝っている。最後に少量のパスタ。これだけはイタリアンだ。デザートは会津の金山かぼちゃを材料にしたプディング。量は年寄りにはやや多めだが、残すほどではなかった。食材には適度にローカル色もあり、各種料理の味付け(ソース、ドレッシング)や温度もマイルドで、タイミングもピタリ。満腹満足である。
翌朝8時に朝食に出かけた。席は同じところだが、バイキングスタイルで各種料理が奥の部屋の暖炉の周りに配されている(別に軽い洋食がキッチンから各人用に用意されるが量が少ない)。見ると飲み物(ミルク、ジュース)、サラダ、果物それにコーヒーを除くと基本は和食。ごはん、五穀米のお粥、味噌汁、漬物・佃煮などのおかずが並んでいる。これはチョッと意表を突かれた。しかし、フレンチディナーの翌朝はこんなサービスも悪くない。二日目の晩は席が奥の部屋に移りメニューも変わったが、前夜同様に優れた内容のフランス料理を、こんどはボルドーとチリの赤で堪能した。全体として宿泊料(3万円/人)を考慮すると、ここの料理にはかなり高い評価が与えられる。
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(次回:予期せぬ出来事)
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