-バス、鉄道、船、乗り物三昧の9日間-
10.高速鉄道ICE-2
12分遅れで出発した列車は直ぐにライン河を渡り、欧州の他の高速鉄道と同じように、しばらくは在来線を走っていく。以降ベルリン中央駅まで途中専用新線があったようだが、駅はすべて在来線と一緒だった。日本の大都市と異なり、中心部を離れるとだらだら沿線に町が連なることはなく、アウトバーン走行と同様、周囲はあまり起伏のない緑野に転じ、ときどき風力発電地帯が現れるくらいが景観変化と言う具合だ。ライン河渡河以外はトンネルや長い鉄橋だけでなく高架も皆無だ。これなら建設費は日本の新幹線と比べて、段違いに安く収まりそうだ。土地収用の費用はともかく、アウトバーンを含め交通インフラ整備環境(特に自然)は我が国とは比較にならぬくらい進めやすい。
車内見学のために前の車両にあるトイレまで出かけてみた。便器・手洗いはステンレス製、広さは新幹線と変わらない(最新ののぞみと比べると格段に新幹線の方がきれい)。トイレを使っていて気が付いたのは横揺れが大きく、小をするにはバランスを保つのに苦労する。車両なのか保線なのか不明だが、これも新幹線の方が勝っている。客席からの景観でチョッと気になったのは、窓が前後二座席分で一個とかなり大きい、見晴らしは良いが、ブラインドを降ろすときには一言ことわりが要りそうだ。
20分くらいで2番目の停車駅、ハーゲン(Hagen)。通勤の退け時だからだろうか、ケルン方面へ向かう番線には大勢人が待っている。次に止まったのはハム(Hamm)。ここは何本もプラットホームのある大きな駅だ。遅れて発車したのにやけに停車時間が長い。ベルリン到着後分かったことだが。後ろに別方面から来た8両編成をさらに連結したのだ。秋田・山形新幹線と言ったところであろうか。この辺りから指定席券を持たない乗客が乗り込んでいるようで、デッキや前の車両の売店付近にたむろする比較的若い人が目立つようになってくる。
小さな駅は無論通過していくが、在来線を走るのであろう、スピードも120~150km/時程度だから、特にホームに防護柵のようなものは設けられていない。ただ駅周辺の看板が抑えめ(自社の敷地や建物のみ)なことと電柱がほとんど見かけないことには感心する(高圧線が走っている所はあるが)。
6時を過ぎるころめいめいあらかじめ用意した夕食を摂り始める。乗ってみて分かったことだが、車両編成に軽食程度は摂れるビュッフェが組み込まれておりそこを利用することが出来たのだ。6時分頃ハノーバー着、ここを出るとスピードが上がり200km/時を上回る数字(最高223km/時)が車内表示板に表れる。線路の両側には緑色のフェンスや整然とした防風林と思しきものが続き、町中を通過する部分では防音壁もあるからICE専用の新線のようだ。揺れも少なくなる。少し考えてみるとこの辺りは旧東ドイツだ。土地収用の自由度が西とは異なりやり易かったのかもしれない。やっと高速鉄道の気分が出てくる。
スピードは上がったものの、出発時の遅れはあまり取り戻せていない。我々の下車駅はベルリン中央駅の一つ先と聞かされていたが、添乗員のFSMさんから「遅れているので中央駅で降ります」と伝えられる。駅からホテルまで専用バスが用意されているのだが、どうもその契約条件が理由らしい(労働時間の制約はかなり厳しいようだ)。中央駅到着8時25分。聞かされていた所要時間は4時間半だから5分違い(短縮)。地図上でラフに求めた2都市間の距離は530km、途中駅の停車時間がかなり長かったことを勘案すると(純走行時間を4時間として)精々平均速度は130km/時と言ったところ。車両の古さや景観の単調さもあり、新幹線と比べとりわけ優れているところは感じられない乗車体験だった。
外はまだ明るく、夕日の中のつかの間のベルリン観光を、バスの窓越しにしながら9時頃にベルリンを代表する大通り、フリードリッヒ・シュトラッセ、に面するホテル(マリティム・プロ・アルテ;他所にも同名のホテルがあるのでチェーンのようだ)に到着。642号室(7階)の造りは万事アメリカンスタイルで、欧州独特の雰囲気は欠くが、率直に言って、居心地(設備の新しさ、広さ、清潔感)・使い勝手はこの方が私にとっては好ましい(フランクフルト同様アメニティは液体せっけん、シャンプー・リンス以外は何もないが)。
写真上から;ICE最後尾車両、車内、ベルリン中央駅ホーム、ホテル正面
(写真はクリックすると拡大します)
(次回;ポツダム)(メールID:hmadono@nifty.com)
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