-因幡・伯耆・出雲を走る-
7.妖怪タウン境港
立ち寄り地に境港を選んだ理由はそれほど深くない。砂浜・砂丘を観る機会はあるが港で目ぼしいところが無い。そこでここが浮かび上がってきた。加えて、経営コンサルタントを務めながら大学教授も兼ねる古い友人が、数年前からこの地方の振興の仕事に関わっており、鳥取市を始め大山や境港の観光・文化情報を発信していて、魚介類の美味しそうな話に惹かれた。とは言っても夕食は松江、昼食はここに至る前に摂るスケジュールになるので、食そのものを目的にするのも適当でない。どうしようかといろいろ当たっていると、ここから松江に至る“江島大橋”が見つかった。この橋は通称“べた踏み坂”、望遠レンズで写真を撮ると直線の道路が空へ上るような光景を呈することから、クルマ好きには有名な場所である。「この坂を走り、写真でもとるか」。おまけに、あまり興味はないが、妖怪を売り物にする“水木しげるロード”もある。孫たちへのお土産に何か良いものがあるかも知れないと。
倉吉は計画時想定したよりかなり南(山方向)に入っていた。遅い昼食を終えてそこを発ったのは2時を過ぎていた。ナビにセットしたのは水木しげる記念館駐車場、大まかな方向は北西、所要時間は1時間半くらいになる。ナビの地図をサーッと見ると、北に向かって海岸に出、そこを西に向かって、米子の手前で浜に沿って北西に向かっている。感覚的にぴったりだったから「ここへ行く」をタッチして走り出した。しかし、倉吉の街を離れ川沿いの道をしばらく北に走ったあと、ナビは北西へ向かういかにも地方道と思える道を選ぶ。倉吉で予想外に時間を費やしたので「有り難い!きっと近道に違いない」と走り進めると丘が迫る小さな集落でナビの動きがおかしくなり、その集落をひと廻りさせられてしまう。やむを得ず、ナビを無視して、それなりの道を太陽の向きを参考に北西を目指すが、人家の無い丘陵地帯はそこここに土砂崩れが在り、片側通行になっている。幸い行き交うクルマは皆無、何とか峠を越し遥か先に海が見えた時にはホッとした。道は北に向かい、国道9号線(旧道)にたどり着く。しばらく西走して、米子市内手前で境港方面に行く国道431号に分岐、やがて長い砂州、弓ヶ浜を右(東)に見ながら明るい西日の中を進んでいく。道は片側2車線で結構交通量は多い。左側(西)にはどうやら米子鬼太郎空港があるらしい。突き当りの川(実は中海と外海つなぐ水路)の手前を左折すると“水木しげるロード”を示す道路標識が現れ、ナビに導かれて無事駐車場に到着、時刻は15時45分。
平日のこの時刻、さすがに水木しげるロードも閑散としている。先ず記念館へ行ってみたが、倉吉で1時間ほど余計に使ってしまったので館内見学はやめにし、西日がきついメインストリートを歩いてみる。大部分は土産物屋と食べ物屋、ほとんど客はいないが、件のロードを東アジア人(多分中国人)の団体らしき人々と若い女性の小グループがちらほらぶらついたり、写真を撮ったりしている。道路のわきにはいろいろな妖怪像が置かれていて、子供にはそれなりに面白いかもしれないが、当方にはさっぱり興味が持てない。先のコンサルタントの友人が、ブログやフェースブックで、この“妖怪”頼りの町起こし策に疑問を呈していたが、私も全く同感である。ディズニーランドのミッキーマウスを始めとするアニメキャラクターが人気を集めるのは、漫画の主人公たちにあるのではなく、テーマパークとしての面白さ・楽しさにあるので、こことはまるで発想が違う。孫たちへのお土産は結局妖怪饅頭となったが、中身よりは包装紙・バックに惹かれたからである。ここを発ったのは4時半、たった45分の観光、食事時でなかったにしても短い。ここだけに来ようと言うリピーターは、残念ながら想像できない。
翌日隣接する松江を観光し、フッとこんなことを思った。都心ならば、松江は山の手、境港は下町。いっそのこと県を超えて、性格・雰囲気の異なる二つを一つにまとめたら1+1=2以上の効果があるのでは?参議院は合区でもあるし・・・と。
写真は上から;記念館、ロード3葉
(写真はクリックすると拡大します)
次回;宍道湖落日
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