-因幡・伯耆・出雲を走る-
9.皆美館-1
松江の老舗旅館、宍道湖畔で当たっていって絞り込んだのがここ。決め手は部屋数が12と少ないこと、明治初期開業の歴史、好きな随筆家内田百閒ら多くの文人たちが利用したこと、宿泊客以外も利用できる評価の高い料亭(臨水亭)があること、などである。希望日の宿泊可否をチェックすると、9月初旬既に残っているのは別邸と称する二部屋(和1、洋1)だけ、特別造りのようでチョッと躊躇したが、宿泊料に標準的な部屋と大きな差は無かったので洋室タイプを予約した。本来老舗旅館は和室の方が正統だし、文人たちを偲ぶにはその方が好ましいのだが、それは本館の一部のみ、最近は万事椅子の方が楽なので敢えてそうした。
美術館駐車場からの道のりはさほどでもないが帰宅ラッシュ時で道はかなり混んでいる。旅館の在り場所は繁華街に近く、道は決して広くない。陽はとっくに落ちているからとにかくナビだけが頼りだ。何度か左折・右折を繰り返し、たどり着いたのが一方通行の短い商店街の通り。前方にT字路が現れ、とてもこんな所に旅館があると思えぬようなところで、ナビは「目的地周辺です」と案内を終えてしまった。後ろからクルマが来たら邪魔になること必定。そうは言っても誰かに確認するしかすべはない。降りて商店街の明るさと対象的な暗がりになっているTの突き当りをうかがうと 小さく“皆美館”と書かれた看板があり、その先が駐車場になっていることが判明した。そこへ車を進めると、明るく構えの立派な玄関が見え、中から洋装の中年女性が出てきて、歓迎の意を表してくれた。5時と伝えてあったチェックイン時刻を1時間近く遅れていたので少々気にしていたようだ。
こじんまりしたロビーでチェックインの手続きを済ますと、今度はこれも洋装の若い女性が部屋へ案内してくれる。フロントデスクの前を通った後、一旦宍道湖に面し、白砂青松を模した庭に出て飛び石伝いに“別邸”に向かう。離れと別邸だけが別棟になっているのだ。
共用の浴場が本館二階に設えてあるとのことだったが、内湯も十分な広さがあるので、ここで夕食前のひと浴びとする。庭に面する2面は障子スタイルのブラインドを開け放つと透明の一枚ガラス、庭園灯の薄明りに陰影を作る木々を眺めながら露天風呂の雰囲気に浸り一日の疲れを癒す。
写真は上から;玄関、リビングルーム1、リビングルーム2、二階テラスから見た宍道湖、庭園
(写真はクリックすると拡大します)
次回;皆美館;つづく
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