2021年5月16日日曜日

活字中毒者の妄言-16


辞書・事典


机上のブックエンドに挟まれ、国語に関する辞書が4種(漢和辞典、国語辞典、漢字表記辞典、類語国語辞典)、いずれもハンディな四六版あるいはB6 版。背面の作り付け本棚には5種(大漢和字典、広辞苑、漢文名言辞典、字源、成語林)、これらは菊版あるいはA5版、厚さは5cm以上ある。小学生の時から現在まで使い続けているのは扱い易い漢和辞典と国語辞典くらい、それらは何度も買い替えている(最新は、角川最新漢和辞典と明解国語辞典、いずれも改訂新版)。この2種は“意味”を知る・確かめることが目的だが、「漢和辞典」は書き順を質すことにも狙いがある。小学生時代から最も嫌いな教科は国語、特に習字は苦手、これは書き順をきちんと覚えていなかったことによる。「漢字表記辞典」を購入したのはワープロ誕生前、正しい漢字を探し確認するためであったが、かな漢字変換ソフトの普及で今はほとんど使っていない。頻繁に利用しているのは「類語国語辞典「」、原稿やブログ記事を書く際、同じ言葉の繰り返しを避けるためである。



大型辞書の「成語林」や「漢文名言辞典」は故事来歴・ことわざの意味を確認する時に時々利用する。近い例では河井元法相が罪状を認めた際、二階幹事長が「他山の石として・・・」と発言したことに対し野党が「他人事のようで無責任だ」と非難した。これは「他山の石、以て玉を攻く(みがく)べし」(詩経)が出典で、「どこにでもある石」の意、二階の用法は間違いでなく(責任政党幹部としての立場は一先ず置いて、個人として)、野党議員の教養の程度を知ることになった(これに限らず、ことわざや故事の誤用は最近多い)。「漢和大辞典」(学研)は父の遺品、「広辞苑」は「いつかは広辞苑」との思いから40歳代に求めたものだ。「字源」(簡野道明編、角川)は“字源”に関する知識を高めたく20代の時購入したが、大正12年刊(私のものは昭和3891版)で漢字・仮名遣いは出版時のまま、古語辞典と大差なく、先ず書架から動くことはない。それでも過日“化学”なる言葉がいつごろどこで出来たのか知りたく、引いてみたが意味だけで“字源”をたどることは出来なかった(Web検索(精選版日本国語大辞典)から、我が国では1860年蕃書調所教授川本幸民がオランダ語から訳したのが初めらしい(Chemie→舎密(せいみ)→化学))

英語は三省堂のコンサイスから始まった。今なら中学入学のお祝いで専用の辞書をプレゼントしてもらえるだろうが、英和も和英も父の使っていたものを渡されただけだった。受験用の単語集を除けば大学入学までこの2冊だけ、このコンサイスも何度か買い替え今も書架にある。この縮小版デイリーコンサイスは仕事で海外に出るようになってから求め、コンサイスの隣に並んでいるが、いずれも今はお役目御免。大学時代に買った「研究社英英辞典」や就職後比較的早い時期に入手した「新スタンダード和英辞典」(大修館)も同じ運命にある。机上に置かれよく利用するのは「岩波新英和辞典」、これは丸谷才一が書評で「適切な例文が多い」と評していたので求め、コンサイスより大判で使いやすいこともあり、既に40年余り愛用している。並んでいる「ライトハウス和英辞典」(研究社)も大きさや例文の豊富さが決め手で1980年代に購入したものだ。当時ビジネスレターの通信教育を受けており、そのために例文の充実度は欠かせぬ要件だった。この通信教育向けにそろえたものに、「英文を書くための辞書」(北星堂書店;和英)、「組立式英文ビジネスレター辞典」(北星堂、例文集)、「会話・作文英語表現辞典」(朝日出版)がある。コース終了まで随分お世話になり、その後会社の専用本棚に置いていたが、出番は今では全く無い。

英英辞典は先に書いたように大学時代1冊所有していたが、いつか英米のものを持ちたいと思っていた。1980年代英語を専門にする人の間で評判の高かった「ロングマン現代英英辞典(Longman Dictionary of Contemporary English」(発売元桐原書店)を購入した。この本はケースとカバーそれに薄い取扱説明書は日本語だが、本体は母国版(英国)、それほど我が国でも人気が高かったと言うことであろう。当に英国版国語辞典と言えるもので使いやすく、1990年代には携行用の「Longman Handy Learner’s Dictionary」(販売元丸善)も買ってしまった。もう一つこれは大判のものだが「Webster’s New World Dictionary」がある。これは米国出版なので米語(軍事やIT関連)を調べるのに適している。英英辞書を利用するのは原書を読んでいる時だから、あまり多くない。大型のものでは「広辞苑」同様「いつかは・・・」との思いから備えた「新英和大辞典」「新和英大辞典」(研究社)が書棚に収まっているが、これも滅多に取り出すことがない(ハンディ版で見つからないときくらいだが、大体ここにもない)。


少し変わったところでは、「あなたの英語診断辞書」(北星堂)や「最新日米表現辞典」(小学館)それに「Doubleday Roget’s Thesaurus」がある。「診断辞書」はちょっとした用法の正誤を単語ベースに例示するもので、これは英文を書く際随分利用してきた。例えば「私は政治には関心がありません」;I feel no interest in politicsWrong)、I have no interest in politicsRight)と言うようにである。「表現辞典」は政治・外交・経済・金融・軍事からスポーツ・宗教・風俗まで21のジャンルで頻繁に取り上げられる用語の和英辞典である。例えば軍事組織名や階級名;自衛隊と米陸海空軍海兵隊4軍間の違いなど、普通の辞書では明確でないことを調べるのに重宝だし、雑学の宝庫でもある。「Thesaurus(シソウーラス)」とは“類語”のことで、これは和文同様英文レポートで同じ単語を頻用しないために現役時代活用していた。英語以外では大学の教養課程使った「木村・相良獨和辞典」(博友社)、ドイツ語を読むことはないが内外の戦史や軍事技術書を読む際参照することがあり、一応現役である。

字引以外の辞典にも触れておこう。所持する辞典類で最も面白く、価格が高い(16000円)のが「岩波=ケンブリッジ世界人名事典」。1994年英国で出版、その後日本語版が1997年岩波から出た。最初の人物はアイアコッカ(米;フォード社長)、最後はワンダー(スティヴィー;米;ミュージシャン)。たまたま二人とも現代の米国人だが、古今東西の著名人が網羅され、1500頁に約15千人収まる小伝と言っていい内容だ。ただし、日本語版は国内で使われることを想定し、日本人は除かれている。これはチョッと残念だ。頻繁に参照するのは「第二次世界大戦人名事典」(原書房)と「第二次世界大戦事典」(朝日ソノラマ)、二つともオリジナルは英国で発刊されている。「世界人名事典」も含め、世界規模の歴史研究では英国が世界をリードしている証とも言える。

最後は学生時代を含めた専門分野。機械工学便覧(機械学会)、「数学辞典」(岩波)、「情報科学辞典」(岩波)が書棚にあるが、これらに関する技術史・科学史を辿る際、ときに引き出すくらい、ほとんど飾り物状態である。

実は座右の書は「カシオ電子辞書」。ここには英和、和英、「オックスフォード英英辞典」、類語辞典はもとより「広辞苑」、故事ことわざ辞典、百科事典もあり、PCにインストールした「英辞郎(英和・和英)」、Web検索(特にWikipedia)で大体のことは済んでしまう。このことから類推すると、電子書籍と自動翻訳を組合せ、世界の興味ある書物を読むのも間近な気がする。そこで活字中毒者はどうなるのか?

 

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