2011年1月25日火曜日

写真紀行-冬の京都を巡る-(3);桂離宮

 桂離宮は元宮家の別荘として17世紀に建てられたもの。今でもその管理は宮内庁が行い、事前申し込みをして、許可された者のみ見学が許される。見学希望日と申し込み手続きの間にあまり日がなかったのでどうなるか危惧されたが、その方面に知人がいるSZKさんの努力で12日午前の見学がOKとなった。ただし、ある人数以上のグループは一度にまとめることは出来ず、9時と10時のスタートに分けられた。私はSZKさん、それにこの見学を切願していた建築の専門家、SKIさんと一緒の先発組みだった。

 われわれを含めて朝一番の見学者は15人程度。それだけが参観者休憩所に入ることを許される。ここでビデオ案内を見た後、職員による見学注意事項の説明がある。「残念なことですが、現在池のメンテナンスが行われており、水がかなり抜かれています。ただ、庭園作りの専門家にはむしろこの方が参考になるかもしれません」とのコメントがある。それと思しき人は見当たらなかったが、ここはその種の人々にとって学習・研究の場でもあるのだ。
 素人の浅知恵でこの庭園は小堀遠州の作とばかり思っていたが、渡されたパンフレットには「遠州は直接関与していないが、遠州好みの技法が随所にみられる」とある。どやら複数の弟子たちとオーナー、智仁(としひと)親王(後陽成天皇の弟)の趣味趣向が合わされた成果であるようだ。
 ルートは表門(現在でも皇室関係者専用)の内側にもうひとつ設けられた御幸門から始まり、時計方向に複雑に入り組んだ池を巡る。途中には山や浜を模した風景、休憩所、茶室などがあり、どこにも景色を愛でるための一工夫がされている。例えば遠近感や高低感の強調(錯覚)や、窓で切り取られる景観の違い(同じ部屋に居て、一方の窓からは山、他方の窓から海)、時間と季節による月(枝越しの月、池に映る月)の変化、踏み石の種類・構成による雰囲気の違い(フォーマル、カジュアル、その中間)、ふすまの柄や違い棚の作りにもそれなりの意味付けがあるようだ。石灯籠だけでも何種もあり、 これだけを調査研究の対象にする見学者もいるという。

 最後は住居である、古書院・中書院・新御殿となるが、ここだけは外観だけしか見学できない。付帯する広い芝庭は蹴鞠などを行うところである。
 新緑や紅葉の季節に、満々と水をたたえた池を巡る景観はさぞかし心打つものだろう。案内者は「私は梅雨が一番だと思います。苔の緑が素晴らしいんです」と言う。しかし冬の真盛り、木々の葉が落ちることで、すべてを見渡せるのも一興であった。
 このチャンスを作ってくれたSZKさんは所用で、阪急桂駅で別れ、一人横浜に帰って行った。
(次回;嵐山・嵯峨野)
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