網走監獄博物館の見学時間はおよそ1時間。これから直ぐにホテルに行っても夕食までにはまだ3時間近くある。網走の町に見るべきものがあるとも思えない。計画検討段階で、もう一つ気になっていたのが小清水の原生花園である。これは市街ではなく、そこから東へ知床に向かう途上にある。ルート検討当初は、三日目網走を発ち釧路へ向かう途上、小清水を経由し斜里まで行って、そこから南下して摩周湖へ向かうことも考えた。ただ、この案では道東ドライブの推奨コース、美幌峠から屈斜路湖への道は採れなくなる。代わりに小清水まで行ってUターンし美幌へ向かう案をオプションとして残しておいた。しかし、Uターンも面白くない。いっそのことこの3時間をそれに使おう。
空は依然と曇り空、午後の遅い時間、花を愛でるにはあまり適当な雰囲気ではないが、“最果て感”を味わうには申し分ない。“監獄”から39号線を238号線との合流点まで戻り網走市内に入る。238号線が終わると244号線がオホーツク海に沿って斜里経由、根室方面に向かってスタートする。小清水までは20km足らず、ひとっ走りの距離だ。市街を出ると道は釧網本線と併走する。本線といっても、走っているのは一両だけのディーゼルカーだ。線路も国道も海際を走るが線路の路床が高い位置にあるので海は見えない。人家もほとんど無い、平らで真っ直ぐな道の先に知床の山々が見え隠れする。行き交う車も少なく、寂しい風景だ。雪の舞う真冬にここを走るのはどんな感じだろう?そんな気分で走っていると、やがて右側には濤沸湖(とうふつこ)が現れる。その先には、駐車場、道の駅そして遊園地の建物と見紛うような可愛い鉄道駅(写真右上)が左側にひとつながりになっている。
着いた時間は5時少し前、広い駐車場には数台の車しかなく、道の駅の売店も店じまいを始めていた。原生花園駅の横の踏切を渡ると、もうそこは砂丘地帯に広がる天然の花園である。木枠で囲われた砂地の散策路を行くと、ハマナス、エゾスカシユリ、エゾキスゲなど黄色、ピンク、紫といった花々が灰色の背景の中に群生している(写真左上)。浜に出てみると大きな流木が散見され、その先に黒い知床半島が遥か先まで続いている(写真右)。砂丘の一番高い場所には展望広場があり、海と反対側には濤沸湖、更にその先には頂に雲がかかった斜里岳(1547m)が、黒い姿で荒涼感を際立たせていた。色とりどりの花とのマッチングは今ひとつだが、黒い愛車には似合う風景である(写真左下)。
今夜の宿泊先、網走セントラルホテルへ着いたのは6時。ここは当地の老舗シティホテルだが、部屋の作り・値段はビジネスホテルと変わりない。夕食はフロントでもらった観光地図にあった、「花のれん」という鮨割烹に出かけてみた。セットメニューの簡単な方(それでも年寄りには少々多すぎた)を選んだが、懐石並みでメインは若蟹(毛蟹)が二人で一匹付いた。本当のシーズンは秋なのだが、今も禁漁ではないので提供できるのだと言う。秋との違いはかに味噌が少ないことだけで、味に変わりは無い。思わぬご馳走にありついた。しかし、焼き物として出てきたのがうなぎの蒲焼であったのは意表をつかれた。確かに土用ではあるが、ここで蒲焼を食するとは思わなかった。満腹の腹を抱えて商店街をホテルへ戻ったが、花金にもかかわらず通りは暗くほとんど人に出会わなかった。
灰色の中に花模様の一日が終わった。本日の走行距離317km。
(次回予定;美幌峠)
(写真はクリックすると拡大します)
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