2012年5月20日日曜日

歴史街道を行く-吉野・高野・龍神を走る-(6)



6.久し振りの奈良観光-2
奈良は吉野・高野・龍神への中継点の役割しか期待していなかった。初日の長距離ドライブの休息地であり、この旅の本命、吉野への前進基地である。それ故宿の選択に特別な要件が在った訳ではない。普通の都市型ホテルで、交通や外食の便がよく、値段がまずまずの所、と言う程度である。チョッと頭にあったのが、一度だけ和歌山工場時代、三重まで来ていた高校時代の友人と会うため国鉄奈良駅で待ち合わせをしたことである。その結果決まったのがホテル日航奈良だった。
場所はJR奈良駅西口。下二階はショッピングアーケードで駅に繋がる回廊があるほど近い複合ビル、三階から上がホテルになっている。ロビーは広く、その点では機能優先のビジネスホテルよりゆったりした雰囲気だ。対応してくれたのは日本語を話せる外人(欧米人)のフロントマンだった。「さすがに国際観光都市だけのことはあるなー」これが第一印象である。「あなたのご予約になった宿泊プランには、奈良市内一日乗り放題のバス券が付きます。今日にしますか、明日にしますか?」 そんなことならチェックインをしてから市内観光をすればよかった!後の祭りである。明日は吉野へ向かうので、仕方なく今日の日付のものをもらう(購入すれば700円/人)。
シャワーを浴び、一休みして食事に出る。繁華街のホテルに泊まるのは宿・食分離のためである。コンシュルジュから情報をもらい、ここよりは賑わう近鉄奈良駅周辺へ行くため東口のバスターミナルに向かう。線路も駅も高架になっており昔の面影は全く無い。西口に比べ東口はかなり開けており、駅からは少し離れた広場の一角にお寺のような妙な建物がぽつんと一棟建っている。「もしやこれがかつての駅舎ではないか?」そんな思いでそこに行ってみると、“奈良市総合観光案内所”の看板がかかっているだけである。何か無いかと建物の外周を探って見ると“通商産業省認定産業遺産”と記された真鍮の銘板が見つかったが“駅”とは書かれていない。釈然としない気分を残しながら、乗り放題券を利用して近鉄奈良駅に向かった。バスストップで三つくらいだが料金は200円だったから、フルに一日使ったら随分お得である。
近鉄側はJRに比べ遥かに賑わっている。丁度サラリーマンの退け時、それに近くにある奈良女子大生の下校が重なって駅周辺は活況を呈していた。ホテルで聞いた“地場の食材を生かした和風”の店はこことJR駅との中間点なので、しばしここら辺を探訪し、面白そうな店が見つかれば入ってみよう。こんな考えでアーケード街をぶらつくことにした。
和洋中華なんでもあり。ひと筋目のアーケードを抜け、その東側を並行する二筋目を歩いているとき、家人がガラス張りの向こうでピッツァを焼いている店先で立ち止まった。「和風の予定じゃなかったのか?」と問うと「これから二晩和風でしょ」と返ってきた。確かに高野は宿坊の精進料理、龍神は温泉旅館である。イタリアンは好物。これで決まりである。
店は一階がカジュアル、二階はコース料理とのこと。少し待つようだったがコースでいくことにする。40人ほどの席がある二階は落ち着いた雰囲気で、ピアノをモチーフにしたモダンな絵がいくつも飾られている。店の名は「Piano」。客は地元の人が多いようだし、馴染みらしい若い外国人のカップル(女性は多分欧州人)もいて、観光客相手の店でないのも好感が持てた。
コース料理は幾種類かあったが、アンティパスト・パスタ(菜の花をあしらったピッツァが土地と季節を感じさせてくれた)・メイン・デザートを選んだ。味は申し分なかったが、料理が運ばれるタイミングにやや難があった(早すぎたり遅すぎたり)。それでもビール、ワインも飲んで(これは一人だが)二人で約8000円はリーズナブル。良い店に行き当たった。
帰りは再び乗り放題券でJR奈良駅まで戻る。バス停からホテルへ向かう道すがら、飲み会帰りのサラリーマンが例のお寺のような建物を「あれが昔の駅なんだよ」と仲間に説明していた。やはりそうだったのだ(後で調べると昭和9年完成の二代目駅舎)。
最後は最上階の大浴場で夜景を見ながら締めくくった。奈良観光は付け足しのつもりだったが、予想外に愉しい時間を過ごせた。
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(次回;カーナビ異変)

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