2012年5月24日木曜日

歴史街道を行く-吉野・高野・龍神を走る-(7)



7.カーナビ異変
419日、空はすっきり晴れ渡っている。天気予報は午後から曇りと言っているがそれを窺わせる気配は全く無い。朝食前にホテル周辺を巡ってみて風もほとんどない。当に観桜日和である。気がかりは吉野の駐車場確保くらい。前夜フロントで確かめると「平日ですから10時頃までに着けば大丈夫でしょう」とのこと。距離は50キロ足らず、時間にして1時間半みておけば先ず間違いない。8時チェックアウトを目安にした。
地下駐車場を出たのは815分。その前にカーナビをセットした。奈良盆地は南北に長くそこには日本の古代~中世の歴史が随所に刻まれ、飛鳥、斑鳩、畝傍、藤原(宮)、高松塚などなじみの名前が、奈良と吉野を長辺とする一枚の地図の中に納まってしまうほどだ。このような背景もあり、この地域の道は大まかに見て東西南北碁盤目状に走っており、南北の幹線路は国道24号線と169号線ということになる。中でも24号線は古くから和歌山と京都を結んできた道、和歌山工場時代よく利用した道路である。つまり分かりやすい道ゆえカーナビの助けは本来不要と考えていた。唯一期待したのは吉野山周辺の案内である。
目的地を“吉野山”と入れると候補地の中に“吉野山駐車場”がずばり出てきた。“ここへ行く”と押すと道順が示され、プロフィルを確かめると24号線や169号線が示される。頭にあるのは24号線を南下、この道が五条方面に南西に向かうところで169号線に入り真っ直ぐ南へ向かい、吉野川にぶつかるところで東に転じて吉野口に至るルートである(地図上のピンク)。プロファイルをザーッと見た印象もそのようになっている(確り確認していない)。
混乱のスタートは地下駐車場から始まっていた。カーナビには駐車場内での複雑な方向転換は全く理解できない。妙な指示を早くも始める。入口と出口が異なるためこちらも方向感覚が鈍っている。双方の不信感がここから生じたようだ。
地下を出ると「左です」と言う(右に行きたいが・・・)。これは前が4車線の広い道だから納得。案内通り左折し直進。これが南北に走る道であることは太陽の位置からも分かる。しかし24号線に出るにはどこかで右折する必要がある。しばらく行くと三叉路(直角ではない)に出た。カーナビは左を指示して来る。「ウン(右じゃないのか)?」 瞬間、無視して右へ向かった。カーナビは元へ戻るよう道順を示す。運悪くここらの道は碁盤目状ではない。感覚だけでホテル方面と思う方向へ走っているとカーナビ案内は沈黙、地図の動きが止まってしまった。仕方なくコンビニの駐車場に入り、ここでセットをやり直した。出発点こそ異なるものの同じルートが示された。何とかホテル周辺に戻り、先ほどと同じ道を南へ向かう。三叉路で、こんどは指示通り左へ方向を採ると、直ぐに右折の指示が出る。この段階でカーナビの意図が理解できた。それは最初から169号線を南下するルート(地図上青)を選んでいたのである(でも何故24号線が出たのだろう?)。
実はコンビニでセットしたあと進行方向を示す矢印が上向きでなくなっていた。こんなことは初めての経験である。これもカーナビ不信に輪をかけていた。しかし、169号線を直進すればいずれ吉野川に行き当たる。道路標識と感覚で何とかなるだろう。やっと気分も落ち着いてくる。しかしである。15分くらい走ったところでカーナビが右折を指示してきた。「エッ(何故直進でないのか)!?」 先の混乱に懲りたのでここは指示通りに右折。次いでに細い道に左折(おかしいな?)。さらに左折(絶対おかしい!)。また左折!169号線を北上し始めている!来た道を戻っているのだ!カーナビの案内を止めることも考えたが、それはいつでもできるので、しばらく指示通り走ってみることにした。するとたどり着いたのは24号線の一部が自動車専用道になっている郡山南ICであった。169号線をひたすら南下することが頭にあったのでどこかで指示を見落としていたのだろう。この自動車道で一気に橿原北ICまで達し(この間は24号線が二本ある)、ここから169号線に戻ることが出来たのである。最初に確りルート確認を行わず、大昔の経験と勘を信じて走った咎は大きく、30分くらいのロスを生じてしまった(結局走ったのは、地図上の緑のルート)。
トラブルはこれで終わらなかった。169号線は吉野川に突き当たり川の北側を東進する。吉野山に行くにはどこかで川を渡る必要がある。西から、美吉野橋、吉野大橋、上市橋、桜橋とあり、吉野大橋がメインである。しかし、カーナビは一番西にある(近い)美吉野橋を渡るように言ってくる。信号で止まったとき見ると進入禁止とある。よく見ると土日だけとわかり右折。狭い!完全に一車線だ!とにかく向こうから来ないので進入する。山と川に挟まれた狭い土地にへばりつくような集落の中の一段と狭い道を進むと山に分け入るさらに狭い道へ導いていく。木立の山中を「対向車が来たらどうしよう!?」そんな思いだけでソロソロと上っていった。10分くらいすると前が開け広い道路に行き当たった。しかしたどり着いた道の前にオレンジ色のパイロンが並べられ、この道との往来を遮断している!(幸い)通行止めだったのだ!赤い蛍光ランプを持った交通整理のオジサンがこちらを(こんな道は登ってくる奴がいるのか!?と)びっくりしたよう見つめ、飛んでくる。
吉野山駐車場は既に満車、二車線の道だが大型バスが曲がるには片側通行しか出来ないのでそのための交通整理をしているのだという。パイロンを動かしてくれたオジサンの指示に従い、下の近鉄吉野駅に近い臨時駐車場に着いたのは10時を遥かに過ぎていた。カーナビ無しで来ていたら9時半には着いていたに違いない。この日のカーナビとの相性の悪さはこれで終わらなかった。
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(次回;吉野山の桜)

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